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胸腹部大動脈瘤手術の術後合併症でその解決がいまだなされていないものに、虚血性脊髄障害による対麻痺があります。当科ではこの対麻痺対策として、全国に先駆けて胸腹部大動脈瘤手術における運動誘発電位(MEP)という脊髄機能モニタリングを採用してきました。その有用性に関しては、臨床経験や動物実験から明らかであり、全国に広がりつつあるモニタリング法です。このMEPというモニタリングは、通常の全身麻酔方法では行うことが難しく、いくつかのコツが必要であるということが我々の経験ならびに臨床研究で明らかとなってきています。いまでは、琉球大学麻酔科方式の麻酔方法が全国に広がり、安定した脊髄機能モニタリングができる施設が増えてきております。
参考文献
Anesthesiology 2003; 99: 1223-1225. 臨床麻酔2004; 28: 1367-1373、
Anesthesiology 2006; 104: 939-943. LiSA 2006; 13: 52-63
(文部科学省研究補助金基盤研究C 17591479 (平成17-19年度))
従来の静脈麻酔方法(体重あたりの投与法)では、麻酔薬の蓄積や過量投与あるいは過少投与となり、安定した周術期管理に支障をきたす場合がありました。このTCIという投与方法は、血中濃度(コンピュータにより計算された予測血中濃度)や生体情報(例えば瞳孔径や呼吸数など)をTargetとし、そのTargetを一定に維持するという投与法です。いまは、propofolやfentanylのTCIを行い、いくつかの成果を挙げております。
琉球大学医学部附属病院麻酔科では、VIMA(Volatile Induction and Maintenance of Anesthesia)と呼ばれる吸入麻酔薬を主体とした麻酔導入・維持法を行っております。
大きな特徴は麻酔導入時に自発呼吸が消失しないことです。これにより、麻酔導入時の呼吸停止に由来する低酸素血症を回避することが可能です。したがって、気道確保困難症例や挿管困難症例に対しても安全に対処できます。もう一つの特徴として麻酔導入から就眠までの時間が1分弱と比較的緩やかであり、麻酔深度の調節も容易であることから、導入中の循環変動も穏やかです。心臓血管外科患者など導入時の循環変動を少なくしたい症例に対しても有効です。
また、気管支ファイバー挿管も自発呼吸を温存できるVIMAにて行っています。このようにVIMAは安全な麻酔法と考えられますが、その実践に際してはいくつかの注意点があります。当院ではVIMAを実践する際に必要な知識や技術を身につけて頂くため、平成13年から年に3〜4回、主に沖縄県外の麻酔科医を対象にしたVIMAインストラクターコースを開催しております。これまでにのべ30人以上の麻酔科医の方がこのコースを修了し、自らの臨床に役立たせております。VIMAインストラクターコースに興味を持たれた方はぜひ琉球大学麻酔科までご連絡ください。
主に口腔外科や頭頸部外科などで行われる経鼻挿管の合併症の一つに、鼻腔損傷があります。損傷の程度によっては大量の出血が認められ、周術期の気道トラブルの一因となります。経鼻挿管時の鼻腔損傷を避けるためにいろいろな方法が報告されていますが、琉球大学附属病院麻酔科では、鼻腔を損傷することのない、より安全な経鼻挿管を行うため、挿管チューブを鼻腔へ挿入する前に気管支ファイバーによる鼻腔内の観察を行っています。挿管チューブの挿入は、鼻腔の開存を確認しながら内腔を傷つけないように挿入し留置された気管支ファイバーをガイドにして行っています。これにより鼻腔内の組織を直接損傷することなく挿管チューブを挿入していくことが可能です。この方法による経鼻挿管施行症例の鼻腔からの出血症例数は、気管支ファイバーを使用しない経鼻挿管施行症例の出血症例数と比較して統計学的に有意に減少しており、患者様により安全な医療が提供できるようになりました。
参考文献
Anesthesiology 2006;105:A1696
超音波ガイドを用いた中心静脈穿刺は、成功率が高く確実です。このため、欧米を中心に推進されてきました。当院では、この新しい中心静脈路確保法をいち早く取り入れ、技術の研鑽に励んでいます。手術室では、長期に中心静脈を使用する外科系の患者において、麻酔科医が独自に超音波ガイド下鎖骨下(正確には腋窩)静脈穿刺を行っています。
臨床で高い成功率を収める一方、穿刺困難症例やピットフォールの報告、新たな穿刺方法の考案、教育のためのシミュレーターの開発やトレーニング法についても研究を重ねています。
当院で研修することで、臨床応用の高い技術を習得することができます。
集中治療において適切な体液管理が行えるか否かは、患者様の予後を大きく左右します。特に近年は病態がより複雑化しており、中心静脈圧や肺動脈楔入圧によるモニタリングを行っても体液管理が難しい症例がときに見受けられます。琉球大学医学部集中治療部ではそのような症例に対してPiCCOTMと呼ばれるモニタリング機器を使用しています。PiCCOTMは肺動脈カテーテルと同様に心拍出量を測定することが可能ですが、大きな特徴は胸腔内血液量や肺血管外水分量も測定できることです。循環系のみならず、呼吸器系の情報も得られることから肺を含む多臓器不全のモニタリングとして利用可能です。肺動脈カテーテルに代わりうる総合的なモニタリング法として特に欧州を中心に利用されており、その有効性は高く評価されています。
我々の施設では、主にARDSおよびALI患者の呼吸・循環管理の指標として、年間約60例にPiCCOTMを使用し胸腔内血液量、肺血管外水分量をモニタリングしながら集中治療管理を行っております。重症患者管理において、呼吸・循環の治療方針や評価をデータに基づき実証しながら治療が行えることから研修医への教育効果も高くその有効性を実感しております。
さらに大手術といわれている食道手術や肝臓切除術中にも、呼吸・循環管理の指標としてPiCCOTMを使用しています。術後の集中治療管理を含めた周術期管理に一貫性を持たせ、患者様へより質の高い医療を提供できるようにしております。