1. 11月21日 垣花先生担当

11月21日 垣花先生担当

最終更新日:2016年12月15日

抄読会

Development of collaterals to the spinal cord after stent graft repair of thoracic aneurysms
Fukui S, et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2016 :52;:801-807
 
はじめに
胸部下行・胸腹部大動脈(DTA/TAA)再建術では、虚血性脊髄障害(SCI)による対麻痺が発生する。このSCIを予防するために、分節動脈再建、低体温、CSFD、脊髄機能モニタリングなどが実践されている。
最近では、脊髄血流に重要な前脊髄動脈に注ぐAKAを術前に検出できるようになり、これがSCIを予防できる重要な因子であると考えられている。しかしながらAKAを覆う血管内ステント治療でも、SCIの頻度がOpen Surgeryより少ない。これには高い血圧管理が関わっているが、このことから脊髄血流には分節動脈1本だけが関わっているということではないことを示している。
血管内ステント治療で、分節動脈が覆われた後の脊髄血流について詳細に検討されていない。
 
方法
対象:2007年5月~2015年8月までにDTA/TAAの血管内治療(TEVAR)を受けた186症例
  全ての症例で、術前にCTアンギオによりAKAとそれに注ぐ分節動脈を検索している。
  ○AKAを検出できた症例は90%(186例中168例)
  ○SCIを発症した症例2.7%(186例中5例)
  ○ステントでAKAに注ぐ分節動脈を覆った症例41例
   これらのうちで、術前・術後のCTアンギオで分節動脈・AKAを検索した32症例
      (他の9例は全て対麻痺なし)
  ○CSFDはRoutine
  ○全ての術前・術後CTアンギオは、放射線科医により評価した。
  ○術後CTアンギオは、TEVAR2週間後に行った。
 
 
結果
○全ての症例で分節動脈からAKAまでの連続性を検出できて、AKAに注ぐ分節動脈
はたった1本であった。
○AKAに注ぐ分節動脈は、
    AKAと同椎体である場合がほとんど:22例(69%)
    AKAの1または2椎体尾側:8例(25%)
    AKAの1椎体頭側     :2例(6%)
○全ての症例でAKAに注ぐ分節動脈が血管内ステントにより覆われた。
   ステント中枢側が左鎖骨下動脈を覆った症例:2例(腋下-腋下動脈バイパス施行)
   ステント中枢側が左鎖骨下動脈起始部末梢側:6例
○病院死亡:0例
○ SCI:2例(6.3%)
    症例1 ・単純なTAAに対するTEVAR
         左鎖骨下動脈起始部からTh10までの20mm(Th8のAKAをCover)
    症例28・切迫破裂瘤に対する緊急TEVAR
         左鎖骨下動脈起始部からTh12までの25mm(Th10のAKAをCover)
○ AKAに注ぐ分節動脈は全症例で閉塞していたが、24例(75%)でAKAが検出可
能だった。
    23例で同じAKAが検出でき、15例でAKAに注ぐ動脈が検出できた。
      パターン1:ステント末梢側1・2椎間下から(55%)
      パターン2:左鎖骨下動脈からの分枝(33%)
      パターン3:左外腸骨動脈(13%)
   1例では、術前には検出されていなかったAKAを検出できた(術前より2椎間尾側)
○ AKAも検出できなかった8症例中2症例が対麻痺であった。
 
 
考察
○TEVARのSCIの一般的頻度:0-12%
  この研究では、2.7%(5/186) → AKAに注ぐ分節動脈が温存ざれている症例を含んでいる。
  TEVARでAKAに注ぐ分節動脈を覆う場合のSCIの発生頻度:6.3%→他の研究と同程度(J Vas Surg 2005;41:589-96, Circulation 2004 ; 110 : 262-7,  J Vasc Surg 2004 ; 40 : 670 – 80)
  TEVARの場合、Open Surgeryと異なり、出血も少なく高い血圧も維持しやすく、それが脊髄へのCollateralを増やしていることが、この低頻度に関わっている。
○今回の研究において、CollateralのPatternを示すことができた。
   パターン1:ステント末梢側1・2椎間下から
   パターン2:左鎖骨下動脈からの分枝
   パターン3:左外腸骨動脈
○今回の研究からも明らかなように、AKAに注ぐ分節動脈をステントで覆っても、SCIを発症する症例は少ないことから、ほとんどの症例がCollateralを期待できる。
 イヌを用いた研究で、前脊髄動脈(ASA)は肋間動脈や腰動脈(Th8~L4)と繋がっており、これがCollateralと成り得ることが示された。(J Cardiovasc Surg 2003 ; 64 : 637 – 45) ヒトでは、これより複雑で、分節動脈以外に椎骨動脈、腸腰動脈、内腸骨動脈がCollateralとなりえることが知られている。DTA/TAAAを有する患者では、AKAに注ぐ分節動脈が既に動脈硬化などで閉塞している場合もあり、Collateralは既に拡張していると考えられる。
 術前のCTアンギオやMRアンギオでCollateralの存在を検出することは困難であったが、それはその時点ではCollateralがCTやMRで検出できるほど十分に発達していなかったからだと考えられる。
○この研究では、1例でAKAが2本であったが、ほとんどの症例で1本だった。Koshinoらは、102のCadaversを用いてAKAの解剖を行ったところ、一人あたりの平均AKA本数は1.3 ± 0.65本であった。この研究では、1本のAKAは74%、2本以上は26%であった。
 今回の研究とKoshinoらの研究の違いは、今回の研究では動脈瘤を有する症例が対象であったということで、動脈硬化で既に閉塞していたのかもしれない。
○今回の研究では、術前に検出したAKAに注ぐ分節動脈をステントで覆わなかった症例でもSCIが発生した。このような症例について、Tanakaらは分節動脈への血栓・塞栓が原因であるとのべている(Interact Cardiovasc Thorac Surg 2014 ; 19 : 205-10)。
 
結論
 本研究では、血管内治療においてAKAに注ぐ分節動脈を覆った場合、AKAに関わるCollateralを示した。今回の研究で、Collateralの90%が左鎖骨下動脈とステント末梢側の分節動脈から供給されていることが明らかとなり、したがってSCIを防ぐには、挿入するステントをできるだけ短く、左鎖骨下動脈からの血流を温存すべきである。