1. 2月13日 和泉先生担当

2月13日 和泉先生担当

最終更新日:2017年02月28日

抄読会

Volatile anaesthetics enhance the metastasis related cellular signalling including CXCR2 of ovarian cancer cells.
Iwasaki M, Zhao H, Jaffer T, Unwith S, Benzonana L, Lian Q, Sakamoto A, Ma D.
Oncotarget. 2016 May 3;7(18):26042-56. doi: 10.18632/oncotarget.8304.
 
 
[背景]
米国での卵巣がんの死亡率は他の婦人科悪性疾患と比較して2倍である
悪い予後は浸潤性だけでなく診断または手術時にすでに転移が存在するためである
がんの再発に周術期の因子が関連している
麻酔法の選択などでがん患者の長期予後を変えることが臨床研究から示唆されている
 
がんの手術で多くの麻酔薬が日常的に使用されているにも関わらず、がん細胞に対する研究はされておらず、吸入麻酔薬とがん細胞の分子細胞学的機序はほとんど分かっていない
 
この研究ではイソフルラン、セボフルラン、デスフルランが転移に関連する遺伝子やたんぱく質に卵巣がん細胞で影響するか、細胞の移動能を増強するかを調査する
 
[結果]
Fig1. tumor metastasis PCR array
SK-OV3 細胞 空気、2%イソフルラン、3.6%セボフルラン、10.3%デスフルランに2時間暴露しガス暴露後6時間 81のうち70のmRNAで発現量が変化
デスフルランで発現量が最も大きい
 
Fig2. RT-PCR でarrayの結果を確認
SK-OV3 細胞 空気、2%イソフルラン、3.6%セボフルラン、10.3%デスフルランに2時間暴露しガス暴露後6時間 CXCR2, MMP11, TGF-β1, VEGF-A
デスフルランで発現量が最も大きい
 
Fig3. 吸入麻酔 CXCR2のタンパク質
SK-OV3 細胞 空気、2% Iso、3.6% Sevo、10.3% Desに2時間暴露し24時間培養 
ガス暴露6時間前にCXCR2 si RNA, scrambled si RNA
A. CXCR2(赤)免疫けい光染色(核はDAPI染色) B. CXCR2定量比較Imag J 1.46 使用
C. 1次抗体なし2次抗体あり D. ウエスタンブロット定量比較
吸入麻酔でCXCR2のタンパク質の発現が増加 CXCR2 siRNAで抑制
Fig4.吸入麻酔 MMP 11, VEGF-A, TGF-βのタンパク質
SK-OV3 細胞 空気、2% Iso、3.6% Sevo、10.3% Desに2時間暴露し24時間培養 
ガス暴露6時間前にCXCR2 si RNA, scrambled si RNA
A. MMP 11(赤)免疫けい光染色(核はDAPI染色) B. MMP 11
C. VEGF-A(緑)免疫けい光染色(核はDAPI染色) D. VEGF-A
E. MMP 11(赤)免疫けい光染色(核はDAPI染色) F. MMP 11
吸入麻酔でMMP 11, VEGF-A, TGF-βの発現が増加 CXCR2 siRNAで抑制
 
Fig5. wound healing assay
SK-OV3 細胞 空気、2% Iso、3.6% Sevo、10.3% Desに2時間暴露し72時間培養 
A. 0, 24, 48時間での B. 0, 24, 48, 72時間での %healing
Control と吸入麻酔でgap closureに有意差
 
Fig6. wound healing assay
SK-OV3 細胞 空気、2% Iso、3.6% Sevo、10.3% Desに2時間暴露し72時間培養 
ガス暴露6時間前にCXCR2 si RNA, scrambled si RNA
A. 0, 24, 48時間での B. 0, 24, 48, 72時間での%healing
各群ともにCXCR2 si RNA,とscrambled si RNAで有意差
 
[考察]
本研究でCXCR2、VEGF-A、MMP11、TGF-βの発現が吸入麻酔によって増加することが分かった
本研究は吸入麻酔による移動能の変化を証明した
我々は過去の研究で前立腺癌細胞・卵巣癌細胞・腎癌細胞でイソフルランはPI3K/ Akt/ mTOR(エムトア)系をへてHIF-1αの合成を増加し、癌の転移能を促進する結果を得た
 
本研究でCXCR2が卵巣がんにおける麻酔の効果による治療対象と確認した
siRNAによるCXCR2のノックダウンでSK-OV3の吸入麻酔による移動能の変化を打ち消した
MMP11とVEGF-Aはアレイでも免疫染色でも増加を認めSiRNAによるCXCR2の阻害で抑制された
これはCXCR2とMMP11の関連を示唆する
 
吸入麻酔薬と比較してプロポフォールはがん手術の患者に有益なことが示され、癌の浸潤を抑制することが研究されている
我々はイソフルランが前立腺がんにおいてHIF-1αを増強すること示している。しかしプロポフォールは低酸素やイソフルランによるHIF-1αの蓄積を減少させる
 
[limitation]
1.局所麻酔と全身麻酔の比較
2.がんの移動能は一つのセルラインで短時間の観察のみであること
3.スクラッチアッセイは癌の移動能を観察するのに良いが、増殖能がこの結果で除外されていない
4.濃度や時間の問題
 
[まとめ]
本研究から吸入麻酔薬は転移に関連する遺伝子や蛋白の発現の変化を促進することが示唆された
分子細胞学的な洞察を提供し、がん患者の手術での麻酔法の特定につながる可能性
この分野の研究は始まったばかりで、広範な前臨床研究と臨床研究が、現状の麻酔管理を変化させることを保証する