1. 3月5日 大城先生担当

3月5日 大城先生担当

最終更新日:2018年04月27日

抄読会

3月1日付けのNEJMからで, ICUに入室するほどの重症ではない救急受診患者に対して行われている輸液の組成の違いが,その患者の予後に影響を与えるのか否か?と言う論文です.

本研究が行われた医療機関であるヴァンダービルト大学医療センターの救急室には年間75,000人程受診されるそうです.2016/1/1~2017/4/30までに訪れた内の13,000人余りを初期輸液として生理食塩水を使用する群と調節型晶質液を使用する群に振り分け,研究が行われました.

両群間で年齢・性別・人種,合併症発生のリスクを示すElixhauser Comorbidity Index score,原因疾患,基礎クレアチニン値,救急室来院時クレアチニン値,長期腎代替療法患者,stage 2以上の腎障害患者,電解質のすべてにおいて両群間で差はなかったようです.

それぞれの群,調節型晶質液群では1088例が,生理食塩水群では409例が治療プロトコールから外れ完遂されたのはそれぞれ5620,6160例でした.

結果1)両群の救急室受診後72時間の血清電解質濃度の変化:生理食塩水群ではナトリウム・クロールは高く,重炭酸は有意に低くかったそうです.それ以外に差はないようで,クレアチニン値にも有意な差はなかったとのことです.

結果2)Intention to treat 解析による主要および副次結果:本研究の主要結果である病院不在日数(救急室来院日から数えて28日ー入院日数)はどちらも25日で差はなかったそうです.副次結果である救急室来院から30日か退院時のどちらか早い時期に認められた,腎機能悪化に伴う事象は死亡例,新たな腎代替療法例,腎機能障害例それぞれに両群間で差を認めませんでしたが,それぞれを合計した症例数で比較すると有意に調節型晶質液群が少なかったとの事です.

結果3)subgroup解析:救急室来院時のクレアチニン値≧1.5の患者とCl値>110の患者ではバランス晶質液の投与が合併症を避ける上でより有効であることが示唆されていました.

考察:本研究において生理食塩水群と調節型晶質液群で病院不在日数に差はありませんでしたが,腎機能悪化に伴う事象は調節型晶質液群が少なかったです. そのリスク軽減値は0.9%でNNTは111でした.しかしながら晶質液により治療を受ける患者は年間数百万人はいるので,調節型晶質液投与により効果を得られる患者は相当数見込まれるだろうと考察されています.

本研究の優れている点として群分け後の治療遵守性が高かったことが挙げられています.これは教育医療機関での非盲検・実用的な研究デザインであったため,救急室受診後の定められた晶質液による初期治療が容易に行われたのではないか,と推察されていました.

制限事項としては単一施設・非盲検試験・入院に限定された結果設定であること,通常の電子カルテに記入される以上の詳細な情報はないこと,一般病棟入院後の治療や輸液に関しては関与していないこと,調節型晶質液の95%が乳酸リンゲル液であり,他の調節型晶質液と3つで比較研究する必要があることなど,が述べられていました.

また本研究は一般的な初期治療輸液としての生理食塩水と調節型晶質液を比較したものであり,患者の状態に応じた輸液の選択については評価してないことが付け加えられています.

結語:救急室を経て一般病棟へ入院された患者の病院不在日数は,生理食塩水群と調節型晶質液群で変わりませんでした.