1. 3月19日 新垣かおる先生担当

3月19日 新垣かおる先生担当

最終更新日:2018年04月30日

抄読会

319日抄読会  新垣 かおる

はじめに

The American Diabetes Associationは、HbA1c 7%以下、血糖値 140-180mg/dL以下を推奨しているが、血糖コントロールと緊急手術後の合併症について論じた報告は少ない。

目的:緊急手術で、術後合併症が、HbA1cと術前術後血糖値と相関するか調査する。

予想:術前HbA1cが高い患者は術後高血糖となり、術後経過も悪くなる。

 

Inclusion and Exclusion Criteria

2013-2015年、緊急手術患者

18歳より上

3ヶ月以内にHbA1cを測定している

術前にSepsisだった症例、入院後24時間以内に死亡した症例は除外した。

 

Data Points

症例:

appendectomy

cholecystectomy

hernia repair

bowel resection

年齢、性別、人種、バイタルサイン、血液検査データ、ASA PS、入院期間、ICU在室期間、術前合併症

術前HbA1c、術前血糖値、術後24時間以内の最高血糖値

 

Outcome Measures

周術期合併症、入院期間、ICU在室期間、死亡率

合併症は、Clavien-Dindo complication systemに従って、major)とminor)に分類した。

30日後の合併症、再入院の有無、死亡率をsecondary outcomeとした。

 

Data Analysis

non-parametric dataにはMann-Whitney U testを、parametric dataにはStudent’s t-testを使用した。2群間の群間比較にはカイ2乗検定を用いた。p< 0.05で有意差ありとした。統計ソフトにはSPSSを使用した。

多重ロジスティック回帰分析にはHosmer-Lemeshowを用いた。

ROC曲線から、HbA1cのカットオフ値を6%とした。

 

Result

HbA1c > 6% 群では、明らかに、白人、肥満が多く、術前合併症がある患者も多かった。

HbA1c 6% 群は、術後合併症、ICU入室率、入院期間、死亡率において、有意に高(長)かった。30日後の合併症と再入院においても、同様であった。

術前HbA1c 6% と、術後血糖値 200mg/dL は、術後合併症のそれぞれ独立した因子である。しかし、どちらも死亡率には有意差が出ていない。

術前HbA1c 6% かつ、術後血糖値 200mg/dL は、術後合併症のオッズ比を大きくする。30日後の合併症、再入院についても同様である。

また、回帰分析では、術前血糖値は、術前HbA1cと術後血糖は相関しないという結果となった。HbA1cは、独立して術後血糖値と相関するが、術前血糖値とは相関しない。

HbA1cの値でみた術後感染の調整オッズ比は、HbA1c 6% を境として、直線状の増加を示した。

 

DISCUSSION

ここ20年間で入院患者の血糖コントロールは進化した。

ICUの重症患者で、血糖値を8010mg/dLに維持することが推奨され、相対リスクを42%減少させる報告も出た。

しかし、厳密すぎる血糖コントロールは、低血糖へのリスクを孕んでいるため、新たな指標として、80140mg/dLが推奨されている。

緊急手術は、術後高血糖のリスクである。しかし、術後高血糖のなりやすさが予測できれば、術後状態の改善に役立つ。

今回、糖尿病の罹患歴や術前血糖値に関係なく、HbA1c 6% で術後高血糖、術後合併症のリスクとなることを報告した。

さらに、HbA1c 6% では、入院日数、30日後の合併症、再入院が増えるという結果になった。

Romasらは、入院日数について同様の結果を報告しているが、人種が多様であること、予定手術と緊急手術の区別がないことが今回の報告との違いである。

脊椎手術の術後患者を対象とし、HbA1cが高いと術後感染が多いとという報告もある。

単一施設前向き観察コホート研究では、術後血糖値が術後の心臓合併症と関連していると報告している。

また、今回、HbA1c 6% かつ術後随時血糖200mg/dL で、術後感染のリスクが8倍になるという結果を得たが、結腸直腸手術、整形外科手術、胃バイパス手術などで同様の報告がある。

今回のわれわれの調査では、死亡率に有意差を認めなかったが、この理由として、手術が比較的容易だったことが挙げられる。重症3枝もしくは2枝病変に対するCABGであったなら、話は別だったかもしれない。

興味深いことに、今回の調査でHbA1cのカットオフ値を7.5% とすると、死亡率のオッズ比が40%大きくなる。

今回のわれわれの報告は、単一施設の後方視的研究であるため、普遍性に欠くかもしれない。

30日後の合併症の評価についても、ほかの施設を受診した場合はとりこぼしとなっている。

 

CONCLUSION

術前HbA1cは、術後合併症のリスクと相関する。

HbA1c 6% かつ術後随時血糖値200mg/dL は、術後の(外科的処置を必要とするほどの大きな)合併症のリスクを4倍にする。

上記のことに、術前の血糖値は関連しない。