1. 10月22日 赤嶺先生担当

10月22日 赤嶺先生担当

最終更新日:2018年12月17日

抄読会

Postoperative pulmonary complications, pulmonary and systemic inflammatory responses after lung resection surgery with prolonged one-lung ventilation. Randomized controlled trial comparing intravenous and inhalational anaesthesia
de la Gala, et al. British Journal of Anaesthesia, 119(4): 655-63(2017)

片肺換気での肺切除術後の肺合併症(肺、全身の炎症性反応に伴う)に関する研究
 
<背景>
術後呼吸器合併症は全身麻酔を受けた患者の死亡の大きなリスクの1つである。
肺切除術では15-37%に呼吸器合併症が起こるとされ、他の手術と比較しても多い。全身炎症反応が1つの原因と考えている。主な炎症反応は高い気道内圧となる片肺換気中に起こる。そのため、片肺換気中は、いつも肺保護戦略が行われるべきである。本研究では、肺切除中の麻酔薬による違いで術後呼吸器合併症の発生に違いがあるかを調べた。Secondary outcomeとして、セボとプロポが炎症サイトカインに与える影響を調査した。
<方法>
2012年から2014年に肺切除術を受けた180人を比較検討した。セボ群とプロポ群の2つのグループに分けられた。麻酔維持はどちらもBIS値40-60になるように調整された。
<介入>
麻酔管理は、すべての患者で同じプロトコルで行われ、標準モニター、フロートラックを使用した。呼吸設定は、8ml/kg(理想体重)、PEEP5、FiO2:0.4-0.5、CO2:30-35mmHg、OLV中は6ml/kg、PEEP:5、SaO2:90%以上を維持する。
SaO2が90%を維持できない場合は、リクルートメントマニューバー、患側にCPAPを使用した。輸液は2ml/kg/hで尿量05.ml/hを維持目標。少ない場合は250mlをボーラス投与した。OLV5分前に両肺(左下肺、右中肺または下肺)BAL、OLV終了時に再度BALを行った。IL-1,2,4,6,7,8,10,12,TNFα,MCP1(単球),VEGF(エンドセリン)などを検査した。血液でのサイトカインチェックは
OLV前、OLV30分経過、OLV終了時、術後6時間、術後18時間の5回のタイミングで行われた。術後はICUで、疼痛管理は傍脊柱ブロック、アセトアミノフェン、NSAIDs、またはモルヒネを使用した。患者は退院までか、または術後30日までは経過観察、1年後に連絡を取って死亡率のデータを集めた。
呼吸器合併症は無気肺、呼吸器感染、呼吸不全、気管支痙攣、誤嚥性肺炎、健側胸水、気胸、とした。他に心合併症(Af、心不全、MI、心停止)、腎合併症、ICU滞在、入院期間、30日死亡率が記録された。
 
<結果>
180人を90人ずつに分けた。セボ群で4人、プロポ群で2人の除外があった。患者背景、手術状況は似た状況(table1)。術中の血行動態に差はないが、呼吸状態、PaCo2や気道内圧、コンプライアンスに差があった(table2)。
セボ、プロポ両群ともに、OLV後にサイトカインは上昇していたが、上昇率はプロポ群で有意に高かった(table3)。抗炎症サイトカインのIL-10はプロポ群で低値であった。IL6-/10、TNFα/IL10の比率はプロポ群で高値だった。術後のサイトカインの上昇はプロポ群で高く長く続いた(table4)。術後のP/Fレシオはセボ群で高い。多くの呼吸器合併症がプロポ群で多かった。マイナー合併症はプロポ群で多かったがメジャー合併症は差がなかった。1年後死亡率はプロポ群で高かった(table5)。
 
<考察>
セボフルランを使用することで呼吸器合併症を減少させる。
ダブルルーメンチューブを使用すると、他の手術に比べ気道抵抗が上昇するが、セボフルラン、プロポともに気道内圧を低下させる。
セボは気管支の平滑筋への直接作用、プロポは抗コリン作用が考えられており、直接作用するセボの効果は気道内圧をより強力に下げる。
腹腔鏡の手術やCOPD患者においても、吸入麻酔の方がより気道内圧を低下させると報告されている。セボが呼吸器の炎症反応を弱める機序は、炎症反応の惹起、虚血再灌流、酸化ストレスに対して発揮される抗炎症作用と考えられている。肺障害の原因の1つは毛細血管透過性の悪化である今回の研究では、セボ群はプロポ群に比べ術後18時間でもP/F比が良い値出会った。セボが肺毛細血管膜の透過性を低下させ、浮腫が起こりにくくなる。それにより機械的な力に対して保護的に働くと報告している論文もある。炎症サイトカインと抗炎症サイトカイの状態はIL-6/IL-10、またはTNF/IL-10の比で評価され、その値は予後に関係しているとされる。我々の研究ではプロポ群で両方が高値であった。
麻酔中の炎症反応に関して、吸入麻酔とセボを比較した研究では、手術全般ではセボが好ましくないとされたが、胸部手術に関してはセボがより良い結果であった。今回の研究でもっとも公表されるべきは、セボ群に比べ、プロポ群はより全身炎症反応が強かったことである。
<Limitation>
  • 当施設ではOLVの時間が長かった、長ければ肺合併症の割合も増加すると思われる。
  • 呼吸器合併症の診断が複雑で難しい。
  • 長期予後はprimary outcomeではなかった。
 
<結論>
肺切除術ではセボを使用群で呼吸器合併症が優位に少なかった。
その結果は、術中の呼吸器関連の指標、術後のガス交換の改善と関連していると思われる。死亡率も減少させる可能性がある