2018/4 渕上先生担当

最終更新日:2019年01月04日

抄読会

Effects of Prone Positioning on Transpulmonary Pressures and End-expiratory Volumes in Patients without Lung Disease
正常肺での食道内圧と呼気終末容量に対する腹臥位の効果
Abirami Kumaresan, M.D., Robert Gerber, B.S., Ariel Mueller, M.A., Stephen H. Loring, M.D., Daniel Talmor, M.D.                         
Anesthesiology 2018 ;128:1187-1192
 
【背景と目的】ARDSに対する肺保護戦略は、肺胞の過膨張や虚脱と再膨張の繰り返しで生じる圧損傷や容量損傷を最小化することにある。食道内圧計を用いた重症ARDS患者への呼吸管理は標準的な呼吸管理より患者予後を改善する可能性がある(Talmor, 2008)。筋弛緩薬や一酸化窒素吸入、肺リクルートメント、腹臥位療法(Guerin, 2013)などは有効性が認められる一方で肺傷害を起こす可能性もある。腹臥位の低酸素に対する効果は1970年代から報告されているがその機序は十分解明されていない。体位による胸腔圧の減少が経肺圧の増加と関連して肺容量を増加させると仮説を立て、全身麻酔下に食道内圧を測定することで経肺圧を考慮したPEEPの滴定を評価した。
【方法】Beth Israel Deaconess Medical Center(BIDMC; Boston, MA)で2014-5年に研究に参加した18人が対照。サンプルサイズはパワー検定を行わず、生理学的な研究として18症例を選択した。これは以前に行った研究と類似した規模である。全身麻酔、筋弛緩薬投与、気管挿管し人工呼吸した。食道内圧はバルーンカテーテルで測定した。吸呼気流量を測定し、その後に肺容量変化を算出した。経肺圧は最高気道内圧-食道内圧として算出。Vt=6ml/kg, PEEP=0cmH2Oで機械換気したのち肺を一定条件で虚脱させFRCを測定、その後PEEP=7cmH2Oで機械換気しFRCを測定した。腹臥位へ体位変換し再び同様の測定を実施した。
【結果】予定脊椎手術患者(ASA-PS Ⅰ~Ⅱ)18人がエントリーした。胸部圧迫による食道バルーン位置が不適当だった2例を除外した。男性 9人、女性 7人。食道バルーン位置=33.8 +/- 2.8cm。食道内圧(Pes)は仰臥位から腹臥位への体位変換で優位に減少した。Relaxation volumeでの食道内圧は腹臥位で優位に減少し、PEEP=0での経肺圧は仰臥位から腹臥位への体位変換で増加した。PEEP=7でも同様に経肺圧は仰臥位から腹臥位への体位変換で増加した。胸壁エラスタンスは仰臥位から腹臥位への変換で増加したが肺(胞)エラスタンスは変化しなかった。Driving pressure(ΔP)は仰臥位から腹臥位で増加したが経肺(ΔP)は変化しなかった。
【考察】呼気終末食道内圧は、仰臥位から腹臥位へ体位変換すると気道内圧の大小にかかわらず減少した。予備呼気量はこの変化に関連して増加した。この変化はFRCの増加を示唆する。これらからARDSにおける腹臥位療法は経肺圧の増加による肺リクルートメント効果が示唆される。経肺圧の増加に一致した肺容量の増加から食道内圧計が体位変換時の有効な平均胸膜圧の評価に有用であることが示唆される。
体位変換によって経肺圧はPEEP=0で5.54cmH2O、PEEP=7で4.96cmH2O増加した。本研究での平均的な肺エラスタンスから、経肺圧の増加によって肺容量は平均300ml増加するはずだが安静時容量は190mlの増加に留まった。この差が縦郭構造の重量から生じるアーチファクトであり経肺圧の増加から算出される予測値に及ばなかった。ΔP (=プラトー圧-PEEP)は仰臥位から腹臥位で増加したが、経肺ΔPは有意な増加はなかった。 ΔPの増加は胸壁エラスタンスの増加が原因だった。
ΔPは他の要素よりも優れたARDS患者の死亡率予測因子ともいわれ(Amato, 2015)、人工呼吸中の ΔPの制御が生存率を改善する可能性が検討されている。ΔP制御の効果は現時点で前向き検討では証明されていないが、人工呼吸器設定上胸壁の影響を念頭におくことは重要である。体位変換時の経肺ΔPは体位変換時の人工呼吸による肺傷害の推定により適当である。
本研究ではパワー検定を行っていないため、仰臥位と腹臥位での経肺圧有意差として99%以上で統計学的有意性が検討された。体位変換によって段階的に生じる食道内圧の変化を観察できなかった。FRCの腹臥位による変化は病態と手術台の構造の両方の影響を受けた可能性がある。
【まとめ】仰臥位から腹臥位の体位変換で食道内圧は減少し、経肺圧と呼気予備量は増加する。重力の影響下で腹腔内容物の尾側への変位は、さらにPEEP負荷の状況で経肺圧と肺容量を増加させる。このことが腹臥位が臨床上の効果をもたらす一つの機序である。
 

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