1. 2019/9/9 我喜屋先生担当

2019/9/9 我喜屋先生担当

最終更新日:2020年04月27日

抄読会

Pulmonary artery catheter use in adult patients undergoing cardiac surgery: a retrospective, cohort study
 
Shaw et al. Perioperative Medicine (2018) 7:24

【背景】
  • 肺動脈カテーテル(PAC)はSwanらによって導入された。
  • CIを予測することや、血行動態の異常の検出、酸素運搬能に基づいたプロトコールの促進により、大手術による死亡率を減少させ得る利点があると考えられた。
  • しかしながら後続の後ろ向き研究では、PACの使用が、死亡率や医療資源の利用、重篤な臓器障害のriskを増加させているとの報告や、PACの利用は利益も害もないと報告するが多数あった。(ただ、これらの報告はPACの使用率が低い病院で生じている可能性が高かったという報告もある。)
  • 心臓手術におけるPAC使用のモニタリング結果に関するコンセンサスの欠如には、不適切な研究デザイン・データの誤解・非標準化治療・トレーニングバイアスなどが潜在的理由として考えられるとの報告がある。
  • PACで得られる血行動態測定の精度と臨床的有用性は、適切なカテーテルの位置とPACに関する専門的知識を有する医師による正しいデータ解釈と相関する。
  • 心臓外科手術PACに関連する臨床成績の研究は、CABGの患者に行っているものが多く、限られた結果や、PACの有用性のみに焦点を絞られたものが多い。
  • したがって、今回 electronic health record (EHR) databaseを用いた後ろ向きコホートにて、すべての主要な心臓手術における臨床成績の評価を行うこととした。
  • コホートは病院規模や患者背景、包括的死亡リスクにてマッチさせた。
 
【方法】
  • データは、the US Cerner Health Facts® (Cerner Corp., Kansas City, MO) database から抽出した。
  • データには、病院の特性(病床数、教育ステータス、場所)、患者のデータ(人口統計、入院方法、保険者)、日付のある薬剤処方歴、検査結果、入退院診断が利用可能だった。診断はInternational Classification of Diseases Ninth Revision Clinical Modification [ICD-9-CM codes]にて規定された。
  • 2011年1月1日から2015年6月30日までに心臓手術を受けた成人患者
  • cardiac surgeries included isolated CABG, isolated valve, aortic, or other complex non-valvular surgery, multi-procedures, or heart transplant
  • コホートはPACの使用に基づいて割り当てられた。PAC非使用群は対照群とした。
  • 除外基準は
    (1)18歳未満の患者
    (2)年間100件未満の適格な心臓手術を実施する病院で治療を受けている患者
    (3)年齢、性別、人種、ICD-9診断、およびインデックス訪問の手順コード、またはインデックス訪問時に投与される薬物の人口統計の記録が欠落している患者
    (4)PACモニタリングの使用を文書化したデータベースを持たない施設の非PAC患者
    (5)入院期間が48時間未満または180日以上の患者
 
Primary Outcomes
  • 病院死亡率 術後30日まで
  • 心肺合併症 POD1-退院後or退院後30日
    不整脈、新たに発症した心不全、主要な有害心イベント(MACE)スコア、心合併症、呼吸不全、人工呼吸器の使用、出血、および輸血
  • 感染症合併症 POD1-退院後or退院後30日
    すでに診断された感染、新たに確認された肺炎、菌血症、尿感染、カテーテル関連血流感染 included the requirement of a positive culture from the relevant sample type as well as a white blood cell count (WBCC) >12×103/μL
  • 在院期間
 
Exploratory outcomes
  • morbidity variables: 
    AKI, gastrointestinal complication, liver complication, neurologic complication, SOFA CV, unplanned readmissions, and all-cause readmissions.
Statistical analyses
  • 死亡リスクにおける二つの群のバランスを取るために、EuroSCOREⅡが計算され、傾向マッチングアルゴリズムにて利用された。
  • PAC暴露の確率を独立変数に患者特性、病院特性、手術の日付、および修正EuroSCORE IIを用いて、多重ロジスティック回帰アプローチを使用して求めた。
  • 1:1マッチングを行った。

【結果】

In-hospital mortality  OR, 1.17; 95% CI, 0.65–2.10; p = 0.516
Cardiopulmonary mortality  OR, 0.87; 95% CI, 0.79–0.96; p < 0.001
Infection mortality  OR, 1.28; 95% CI, 1.10–1.49; p < 0.001




Bacteremia OR, 1.36; 95% CI, 1.02–1.82 p = 0.036
Urine infection  OR, 1.58; 95% CI, 1.21–2.06; p < 0.001



Post-op KDIGO AKI  OR, 0.86;  95% CI, 0.75–0.97; p = 0.016
【考察】
  • 1996年のConnorsら以降、当初は重症患者に対する肺動脈カテーテルの有用性が疑問を持たれ、様々な集団に対する多くの前向き・後ろ向き研究が行われてきた。これらの研究は、歴史的な因子・限られたデータベース・集団の規模・集団の不均一性・PACの経験などの様々な角度によって影響される。
  • 6200万人を超える患者によるEHRデータベースにより、上記の要素を緩和し、PACの害と利点を再評価しようとした。この大規模なデータベースにより、傾向スコアマッチングを可能にした
  • Based on 患者と病院の特徴、検査結果や薬、Euro SCOREⅡを通したバイタルサインによる死亡率
  • Exclusion年間100例以下の施設
  • 筆者らは、今回の研究の様に、害の根拠を探す様に設計された観察研究は、適応と選択的バイアスに対して信頼性が高いと考える。理由として、医療者は意図して患者に危害を加える選択を行おうとはしないからであると考えた。期待していた通り、2003年にできた現行のガイドラインに基づく非常に大きな集団は、PACが重症な患者に優先して使用されていることを明らかにした。
  • PACの使用・非使用群を1:1でマッチさせた傾向スコアによる心臓手術患者におけるコホート試験を用いて、PACの使用は院内30日死亡率に対して、死亡率のリスク増加と関連しない事が明らかになった。しかしながら、今回の6844人の患者による大きな集団にも関わらず、両群における死亡率がもともと低いため、決定的な結果を検出する検出力が十分でなかった。power 0.0575
  • 統計的に、PACの使用は入院期間の有意な減少と、心肺合併症の有意な減少に関連している ⇨PACモニタリングによる潜在的な利点を示唆している。
  • 今回の研究ではPAC使用時の輸血率の有意な減少は観察されなかったが、出血量の有意な減少は検出された。これは2005年に報告された、PAC患者の輸血量の減少を示した研究を考えるなら、PACの使用が上記2つのアウトカムに正の相関を与える可能性があることを示唆している。死亡率について考えると、後方視的な研究は相反する結果を示すものがある。最近の研究で、異なる国家管理データベースによる2つの大規模後ろ向き研究では、片方(Chiang et al. 2015)がPACの使用は有意に死亡率を上げるとの報告、もう片方(Brovman et al. 2016)は有意に死亡率を減少させないと報告している。特に前者では、80歳以上やうっ血性心不全などのハイリスク患者において死亡率が高い事が明らかになった。
  • 他の研究と同様に、PACの使用はUTI及び菌血症に関連しており、感染症に関連性を示す。筆者の研究では、カテーテル感染についての違いは検出しなかった。
  • よって、筆者の考えではPACを抜去できていない場合、通常フォーリーカテも抜去できていない事によるUTI感染率の高さを検出しているのではないかと考える。しかしながらこのデータベースでは、フォーリーの留置タイミングや期間、またCVカテのケアなどの情報は無く、関連を調べる事ができない。
  • PAC使用に関連する中立または否定的な結果や、近年提案された新しい非侵襲的血行モニタリング技術の開発を示唆する複数の報告にも関わらず、心臓手術におけるPACの利用は堅調なまま(もしくは増加している?)との報告がある。
  • 今回の後ろ向きコホートでは、PACコホートはnon PACコホートと比較して入院期間と心肺合併症の有意な減少を示した。これらは院内死亡リスクに大きな変化がない場合、近年のPAC利用の増加の報告の理由を説明できる助けになるかもしれない。
【まとめ】
  • 6844人の患者を対象としたこのEHRデータベース研究では、心臓手術におけるPACの使用が、害をもたらさず、かつ何らかの利益をもたらす可能性があるとの仮説を検証した。
  • 成人の心臓手術患者でのPACの使用は、死亡リスクの増加なしに、入院期間の短縮、心肺合併症の減少に関連している。
  • PACの使用は、菌血症とUTIの発生に強く関連しているが、カテーテル感染とは関連しない。
  • 総合的に、深刻な害がなく利益のある可能性のあるPACモニタリングは、今後のよくデザインされた集団(例えばhigh risk vs low riskなど)への前向き研究に影響を与えるだろう。