2020/6/15 仲嶺先生担当

最終更新日:2020年06月17日

抄読会

Subomohyoid anterior suprascapular block versus interscalene block for arthroscopic shoulder surgery
A multicenter randomized trial
Abdallah FW, et al.
Anesthesiology 2020; 132: 839-53

肩関節鏡視下手術における
肩甲舌骨筋下肩甲上神経前方ブロックと斜角筋間ブロックとの比較

要約
背景:肩関節手術の標準的な疼痛緩和である斜角筋間腕神経叢ブロックは重大な合併症と関連する侵襲的な技術である。肩甲上舌骨筋下肩甲上神経前方ブロックは代替の可能性があるが疼痛効果の比較検討が少ない。筆者は肩関節手術後の疼痛緩和に肩甲舌骨筋下肩甲上神経前方ブロックは斜角筋間ブロックに劣らないと仮説を立てた。二次的な目的として肩甲上神経ブロックでの腕神経叢上神経幹ブロックの成功率を評価した。
 
方法:この多施設二重盲非劣性無作為試験は、肩関節手術を受ける140人の患者をエピネフリン添加0.5%ロピバカイン15mlで斜角筋間と肩甲上神経前方ブロックに振り分けた。主要評価項目は術後24時間でのVAS(視覚アナログ尺度)のAUC。両者の違いを90%信頼区間が-4.4U非劣性境界で比較検討した。副次評価項目は上神経幹遮断の有無、各時点での疼痛評価項目、麻薬使用、鎮痛薬要望までの時間、麻薬関連副作用、回復の質を含んだ。
 
結果:総数136人の患者が解析に含まれた。両者を比較した疼痛項目AUCの平均絶対差(90%信頼区間)は-0.3U(-0.8 to 0.12)で非劣性境界の-4.4Uを超えていて肩甲上神経の非劣性が示された。上神経幹遮断を含む相対危険度(95%信頼区間)は0.98(0.92 to 1.01)で両群間の上神経幹遮断成功率の有意差は除外された。他の疼痛結果の違いが存在する時、臨床的には重要ではない。
 
結論:肩甲上神経ブロックは術後疼痛緩和と上神経幹の遮断効果が斜間筋間ブロックに劣らなかった。今回の所見で肩甲上神経ブロックは上神経幹を遮断しそれにより効果的な斜角筋間ブロックの代替方法になりえると提案される。
 
(Anesthesiology 2020;132:839-53)
 
 
 
 
質疑応答
 
Dr.安倍より
Q:「あなたはどちらのブロックを受けましたか?」の正答率の違いについて記載はありましたか?
A:本論文には記載はありませんでした。両群とも正答率が半分以下で、肩甲上神経群では1/4ほどしかありません。確かに正答率の低さは気になります。
 
Dr.野口より
Q:有意差なしとのことでしたが斜角筋間群の方が効果強そうにみえますが?(疼痛スコアや鎮痛剤消費量などから)
A:統計学的有意差はないとのことでしたが実際は差があるように確かに感じます。本研究は非劣性試験で最初から斜角筋間群の方が鎮痛効果が強いという状況から始まっている影響もあるかもしれません。
 
Dr.大城より
Q:呼吸機能を胸部レントゲン検査や血液ガス検査を行って評価していないので横隔膜温存効果があったとは言えないのではないでしょうか?
A:呼吸の評価項目はSpO2<95%の記載であったのでそれだけでは不十分であります。以前渕辺先生が行ったレントゲン写真を撮った研究の様な判断材料が必要かと考えます。
 
Dr.垣花より
Q:この方法はどのような症例に適応していけばよいと考えますか?
A:単回投与の研究で持続投与が必要な症例には向いていないと思います。カテーテル刺入点が術野に近いことも欠点といえます。関節鏡下手術、横隔膜温存効果を期待したい症例が今のところ適応かと考えます。