教授ブログ「まなぶろぐ」

琉球大学医学部麻酔科学教室 教授:垣花 学(かきのはな まなぶ)のブログです。

“最近の若い者は・・・・・”

2019-03-14

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いかなる生物も誕生時から肉体的にも精神的にも成長し、さらに主に肉体的に老化し死に至ります。精神的な部分については、体が衰えても精神的にしっかりされた方も多くいらっしゃることから死ぬまで成長を続けられると考えられます。このことから、誰しも肉体的にも精神的にも未熟な時期があることは当然なことでしょう。では、ベテランの方々が常々口にする “最近の若い者は・・・”というフレーズですが、そもそも当然若者であった時期を過ごしてきたベテランの方々は、かつてその先輩方にどのように表現されていたのでしょうか?

 先日、琉球大学医学部附属病院臨床研修センター主催の「RyuMIC指導医養成セミナー」に、責任者として参加してきました。このセミナーでは、はじめに受講生(卒後7年目以降の指導医)に対し「研修医指導における悩み」をKJ法という手法を用い表現させています。私はこの十数年にわたりタスクあるいは責任者として関わってきたので、「研修医指導における悩み」を経時的に見ることができるという貴重な経験をさせてもらっています。今年も悩み多き指導医が持つ「悩み」を眺めていると、「雑用を嫌がる」、「早く帰りたがる」、「研修医にやる気が無い」、「モチベーションが低い」など、研修医に対する“悩み”が例年通り多くみられました。その時、ふと気づいたことがありました。この指導医の“研修医に対する悩み”ですが、指導医養成セミナーが始まったころの十数年前から「研修医にやる気が無い」、「モチベーションが低い」などは多く見られました。つまり、ある種の普遍性を持っているということでしょうか? 考えてみると、今年の受講者の殆どが十数年前には研修医だったはずであり、つまり彼らも研修医の頃は、この指導医養成セミナーに参加していた指導医から「やる気が無い」、「モチベーションが低い」と思われていたということです。そこで私のほうから今年の受講生に、「皆さんが研修医の頃の指導医も、あなたがたに同じような悩みを持っていたのですが、皆さんが研修医のときに「モチベーションが低かった」とか「やる気がなかった」という方はいらっしゃいますか?」と尋ねたところ、そのような方は誰もいませんでした。個別に尋ねてみても、「やる気はあった」し「モチベーションが無いわけではなかった」という答えでした。

 これは、かつて研修医であった指導医がその時代から成長をしたということ、あるいは研修医の頃の若者が自分の「やる気」や「高いモチベーション」を表現することが不得手であり指導医に伝わっていない可能性が考えられます。いずれにしろ、研修医も決して「やる気がない」わけではないし、「モチベーションが低い」わけでもないということのようです。我々指導医としては、個人差はあるにしても彼らの持っている「やる気」や「モチベーション」を引き出してやることも仕事のひとつだということでしょう。

“最近の若い者は・・・”と思っているあなたは、かつてはそのように思われていたということに気づいていますか?

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