教授挨拶

 

琉球大学医学部麻酔科学教室(現:琉球大学大学院医学研究科麻酔科学講座)は、奥田佳朗名誉教授を初代教授として昭和59年に開講しました。その後、平成12年度から平成25年度(平成26年3月31日まで)にかけて須加原一博教授が主宰し、そして平成26年5月1日より垣花 学(かきのはな まなぶ)が第3代教授としてその任に就いています。当講座では麻酔科学のみならず附属病院の集中治療そしてペインクリニック・緩和医療にも関わっています。

集中治療部では、2名の専従医ならびに1名の後期研修医が常勤し、心臓外科手術症例を主として大侵襲の術後患者、呼吸不全を伴った敗血症患者そして心肺蘇生後の患者など年間400例弱の症例をSemiclosedで管理しています。ペインクリニックでは、3名のペインクリニック医により、腰下肢や上肢の難治性慢性疼痛患者、三叉神経痛患者、帯状疱疹後神経痛など様々な症例の診療にあたっています。また、緩和医療チームの中心として、全人的な痛みの治療を行っています。

当科では毎朝、当日の麻酔管理全症例のカンファレンスを行い、麻酔科医全員が当日にどのような症例があるのかを把握するようにしています。また、毎週金曜日には前週の主な全身麻酔後の合併症(術後悪心嘔吐、嗄声、術後疼痛)の発生率ならびに問題のあった数症例を検討しています。

さらに麻酔管理上特に問題のあった症例は、ハワイ大学式Problem-Based Learning Discussion(PBLD)により検討を行っています。これらの症例検討会では、リラックスした雰囲気を作り、参加している医局員が気楽に発言できるように心がけています。また、毎週水曜日には「水曜研究会」を開催し、医局員により麻酔・集中治療・ペインクリニックの最近の話題に関するReviewや米国麻酔科学会のRefresher courseを用いたLectureを行い、その知識の整理に役立てています。さらに、大学院生(社会人枠大学院も含む)が5名在籍し、動物(マウス・ラット)や培養細胞を用いた基礎研究でいくつかの成果も挙げています。

琉球大学麻酔科の運営として、まずリラックスできる医局を作ろうと思っています。この「リラックス」というのは、“ゆるい”ということではありません。麻酔科医の仕事は、起こりうる危機的な状況に対し準備を怠らず、常に危機的な状況を回避するように管理することが求められます。また、危機的な状況が起きた場合には、瞬時に適切な処置を行うことが求められます。このように緊張する医療現場におかれた状況では、真の実力を発揮するには日ごろから「心を整える」必要があります。この「心を整える」には、麻酔管理から離れる少ない時間にリラックスできる雰囲気が必要であり、それを提供できる教室運営を心がけています。

また、これからの時代の麻酔科医には、“麻酔管理ができる”以外に他の医療技量が必要となります。このような状況のなかで、教室員には麻酔専門医以外の資格(集中治療専門医、ペインクリニック認定医、心臓血管麻酔専門医、周術期経食道心エコー認定医など)を獲得するように勧めていきたいと考えています。さらにこれからのGlobalizationを考慮して、国際学会での発表や国外留学を勧めていきます。当教室では、2002年から1年目の後期研修医には米国麻酔科学会(ASA)や国際麻酔研究会議(IARS)へ参加させており、また教室員にはカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)麻酔科やハーバード大学マサチューセッツ総合病院(MGH)麻酔科への留学を勧めています。平成26年5月現在、1名がUCSDに留学中です。

これまでの琉球大学医学部麻酔科は、離島を含めた沖縄県の地域医療を支え、独自の教育システムで研修医ならびに専門医を輩出し、さらに独創性のある研究からその成果を国内外に多く発表してきました。私はこの伝統を維持さらに強化していきたいと思っています。さらに、時代のニーズが要求することに対しても、積極的に取り組んでいきます。新たな体制となった琉球大学医学部麻酔科をこれから医局員皆とともに作り上げていきたいと思っています。もし麻酔科学に興味があれば、琉球大学麻酔科の門を叩いてみてください。南国沖縄で一緒に麻酔科研修をしましょう。