1. 集中治療

集中治療

総合的・集中的に全身管理を行う医療

当院集中治療部(ICU)では、麻酔科専門医を取得した4名の専従医が主治医と共同して日中の全身管理を行い、休日夜間も麻酔科専門医1人を含む2人の麻酔科医の2交代制勤務による24時間体制の緻密な集中治療を実施しています。2025年には新病院に移転し旧病院の8床から16床に増床しました。年間400余例だった受け入れ患者数は2025年810例でした。新病院では、先の新型コロナ感染拡大の経験を踏まえて陽陰圧個室3床を確保したほか、ECMOをはじめとした医療機器の使用に対応した最先端の設備が充実しています。

当ICUは、『特定集中治療管理料1』の基準で運営しています。 この『特定集中治療管理料1』では、従来の2:1看護体制や医師の常駐に加えて、集中治療医学に精通した医師の常時配置や夜勤体制の確保、集中治療や重症ケアのサブスペシャリティー認定看護師の常駐、臨床工学技士の24時間常駐、重症度を基にしたベッド運用の厳密化、1ベッドあたり20㎡以上のスペース確保などより質の高い体制が整備・実践されます。

集中治療は、優れた医師だけでは成り立たたない、多職種の連携が求められるチーム医療の舞台です。当ICUでは、サブスペシャリティー認定看護師や特定行為認定看護師が主体的に、緻密な集中治療看護を実施しています。理学療法室や専任の理学療法士と連携して早期離床リハビリテーションから絶え間ない患者回復支援が行われ、栄養療法では管理栄養士2名が常駐し、医師・看護師と連携して早期栄養管理を行っています。

本院は島嶼県である沖縄に唯一の大学病院であり、各診療科は患者さんにとって最後の砦です。私たちも各科をサポートすべく連携を密にし、高い専門性を維持するためにハード面、ソフト面の両面の充実に努力しています。具体的には、循環器ではDT適応を含む植え込み型左室補助人工心臓(LVAD)などの心不全治療や経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を含む心臓大血管手術の周術期管理を行います。当ICUは日本呼吸療法医学会認定施設でもあり、再挿管のリスクを最小限にするウィーニングプロトコルを用いながら、呼吸不全に対しては多様な最先端の人工呼吸器・換気様式を駆使して病態に適した人工呼吸を行っています。また急性血液浄化学会認定施設として、腎不全や肝移植周術期を含む肝不全、敗血症性ショックなどに対して、様々なモダリティー(緩徐持続式血液ろ過透析、エンドトキシン吸着、顆粒球除去、リンパ球除去、血漿交換やPlasma Dialysis with Filtration等)を駆使した急性血液浄化療法を、高い技術をもつ臨床工学技士と協働して実施しています。

現在、日本専門医機構サブスぺシャリティー集中治療専門医研修施設として指導医3人が所属(専攻医定数24)し、10名を超える専攻医が集中治療科専門医研修を行っています。

以上から当麻酔科・ICUは、麻酔科専門医を志す医師にとって、術中管理にとどまらない麻酔科診療の広がりを実感し、充実した研修を行える教室であると自負しています。

教育

我々は、常に高いレベルの治療を提供するため、以下に示す事柄を中心におこなっています。

  1. 呼吸管理:教育目標は「人工呼吸モード」や「呼吸音の聴診」など従来の呼吸管理の基礎の習得にとどまらず、適切な鎮静や人工呼吸器関連肺炎などの感染症対策、栄養管理などを含めた包括的な全身管理法の実践です。当科では研修医が、ICUの研修を通して、どのような人工呼吸器でも操作でき、個々の患者に適した人工呼吸を行える知識と技術を身につけられるようにも配慮しています。実際に使用している人工呼吸器も多彩で、Adaptive support ventilation: ASVやProportional support ventilation: PAV、Airway pressure release ventilation: APRV、High frequency oscillatory ventilation: HFOVなどそれぞれの機器に特化した特殊な換気モードを用いた人工呼吸管理を学ぶことができます。コメディカルスタッフを交えた部署内の勉強会などでスタッフの診療・看護力の向上を図っています。
  2. 循環管理:当施設は補助人工心臓植え込み手術の認定施設ともなっており重症かつ稀な成人心臓手術患者を収容するICUとして、IABPやPCPSなどの生命維持装置を用いた重症の全身管理を経験できます。これには一酸化窒素(NO)吸入療法なども含まれます。このような診療から得られた知見を、循環器合併症を有する非心臓手術の周術期管理や循環器以外の内科系重症患者の循環管理に応用する能力も身に付きます。
  3. 超音波ガイド下中心静脈穿刺:集中治療を行う多くの患者では、静脈ライン確保を安全確実に行うことが重要です。特に、DICや抗凝固療法を行っている患者では、動脈誤穿刺が致命的な合併症を引き起こすことがあります。当科では、ライン確保に際して超音波診断装置を用いることの有用性に早くから着目し、リアルタイム超音波ガイド下中心静脈穿刺を積極的に行ってきました。これによって、いかなる状況でも躊躇・中断することなく円滑・安全に治療を行っています。研修医は、内頚静脈や大腿静脈だけでなく、鎖骨下(正確には、鎖骨尾側腋窩)静脈のライン確保を超音波ガイド下に行えるようになります。また、動脈圧ライン(A-line)の挿入にも、超音波ガイド下穿刺を行っています。
  4. 超音波ガイド下神経ブロックによる鎮痛法:ICUの患者は、様々な理由で、術後鎮痛に用いられる硬膜外ブロックを受けられない場合があります。そのような患者でも、超音波ガイド下に肋間神経ブロックや腹直筋鞘ブロックなどを行うことができます。当ICUでは、麻薬性鎮痛薬の持続静注法だけでなく、これらの神経ブロックを超音波ガイド下に行うことで、確実で効果的な除痛を行っています。

当科ではICUでの研修のため、独自の研修マニュアルを作成しています。マニュアルの他にミニレクチャーも用意しており、研修の合間の短い時間を利用して効果的に学習できるように配慮しています。麻酔科後期研修におけるICU専従での研修期間は、約2カ月と短いですが、麻酔科専門医取得をめざす後期研修医にとって多くの有益な知識と技術を習得できると考えています。また、院内外の初期研修医の研修教育にも積極的に門戸を開いています。