1. 10月3日 渕上先生担当

10月3日 渕上先生担当

最終更新日:2016年10月17日

抄読会

PEEP titration during prone positioning for acute respiratory distress syndrome
Beitler et al. Critical Care (2015) 19:436

【背景】PROSEVA trialではARDSに対する腹臥位療法が重症ARDS患者の生存率を改善した (Guerin et al. 2013)。腹臥位の有効性を検討した研究は以前から報告されたが、PROSEVA trial では筋弛緩を用いて厳密な低一回換気量換気を実践し、対象をより重症なARDS(P/F比<150)に絞り、腹臥位時間を延長することで明確な有効性を証明できた。
PEEPには腹臥位と類似した効果が期待される。しかし高いPEEPの有効性を証明した大規模なRCTはなく、3つの臨床研究を合わせたメタ解析によって、中等症から重症のARDS患者を対象とした場合で、生存率やventilator-free daysの改善が報告されたにとどまる[Briel et al. 2010]。
 
【方法】著者らは最近腹臥位療法の7文献についてメタ解析を行い低一回換気量換気と腹臥位療法の「併用の有効性を報告した[Britler, 2014]が、さらに症例ごとのPEEPの詳細が追跡できた3文献[Guerin 2013, Guerin 2004, Mancebo 2006]の症例を対象として腹臥位と併用したPEEPの設定値を検討した。
 
【結果】介入前のPEEPはPEEP<5cmH2Oが全体で21.8%となり、PROSEVA単独と類似していた。仰臥位ないし腹臥位施行後はPEEP<5cmH2Oが16.7%、PEEP<10cmH2Oが66%だった。体位変換後のPEEPの平均値やPEEP>10cmH2Oの割合などに体位の違いによる有意差はなかった。吸入酸素濃度からALVEOLI trial[Heart N. Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network. N Engl J Med. 2004]やLOSV trialでの「高いPEEP」を用いるプロトコルを仮定して算出した「仮定の高いPEEP設定」と実際用いられたPEEPを、体位変換前後で比較したところ、いずれの研究でも実際に用いられたPEEPは「仮定の高いPEEP設定」より有意に低値だった。
 
【考察】本研究から腹臥位療法が施行される重症ARDS患者でも高いPEEPは一般的には用いられていないことが分かった。中等症から重症のARDS患者では、腹臥位か高いPEEPの単独使用は一般に受け入れられているが、腹臥位と高いPEEPの併用の是非について、またその際の具体的な最適なPEEPの目標値については不明な点も、今後の臨床研究の成果が待たれる。現状では、個々の症例で、患者の状態や禁忌事項、スタッフの習熟度など詳細に検討する必要がある。
 

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