1. 3月13日 神里先生担当

3月13日 神里先生担当

最終更新日:2017年04月12日

抄読会

The effects of advanced monitoring on hemodynamic management in critically ill patients: a pre and post questionnaire study. Perel A, et. al, J Clin Monit Comput. 2016 :511-8. doi: 10.1007/s10877-015-9811-7
詳細な循環動態のモニタリングにより治療方針はどのように変化するか
 
<はじめに>
 重篤な症例に対する最適な管理は的確な循環動態の評価が必要である.しかしながら循環動態の正確な評価は困難である.身体所見とバイタルサインでは心拍出量(CO)は予測できない.そのため、バイタルサインの改善(正常化)は循環管理のエンドポイントとはなりえない.さらに中心静脈圧(CVP)測定も水分管理には適さないという報告が多数されている.
 近年登場した循環モニタリング機器が循環管理の指標になりうるという報告がされている.しかしながら新たなモニタリング機器はエビデンスが不十分であり、CVPが未だ使用されている.
本研究では以下の循環モニタリングに関して検討した.
1)重症患者において臨床的診断はどの程度正確か
2) 循環モニタリングは治療指針に影響を与えるか
 
<方法>
 欧州7カ国の集中治療室(ICU)での検討.経肺熱希釈法(transpulmonary thermodilution TPTD)による評価(本研究では,PiCCO systemを使用し,その使用は臨床医に一任).
 検討項目として, CO以外にGEDV(global end-diastolic volume),EVLWI(extravascular lung water index)に関して検討した.
以下の診療上の決定項目に関しTPTD施行前と施行後で診療計画の変更の有無を調査した.1) 輸液量,2)輸血量,3)陽性変力薬,4) 血管収縮薬,5) 利尿薬,6) 血液濾過透析,6) その他
 
<結果>
206症例(Male 122 / Female 84)で検討した.臨床医(治療医)は315名が研究に参加した(研修医 166名,指導医 143名,6名は不明).研修医 の
39%が20例以下の経験で,指導医の71%が50例以上の経験を持っていた.
 
<結果>
 臨床医はCO,GEDVI,EVLWI全てで低い値を過大評価し,高い値を過小評価した.これには経験年数も経験数(50例以上の経験の有無)も関係しなかった.
 COに関して,75%(233/312)で過小評価(すなわち予測値<実測値)であり,54%(167/312)では20%以上過小評価していた. +/-20%に収まるのは36%(111/312)だけであった.本研究の結果より,臨床的パラメータを予測することは限界があることが示された.
 
<考察>
 かなりの確率でCOあるいは前負荷モニタリングや肺水分量を指標に治療方針が変更された.
 本研究の結果から「臨床兆候」と「通常のモニタリング」から正確に患者状態を把握することは困難であることが示された.臨床医はCO、GEDVIとEVLWIのすべてで低い値を過大評価して、高い値を過小評価する傾向があった.
これは過剰な介入をしてしまう恐れがある.
 TPTDの結果により治療方針が多くの症例で変更になった.具体的には 22%の強心薬と22%の血管収縮薬の選択が変更され,ほかにも13%の利尿薬の選択が変更, 33%で輸液療法に関して方針変更,10%で輸液負荷,23%で輸液制限などとなっていた.
 今回の結果から,臨床的な経験年数や循環動態のモニタリングの経験数は循環動態の評価する能力を向上させないことが判明した.
 しかしながら,本研究では介入直後の治療介入の変化にのみ注目しており,患者予後を検討することはできない.
 
<結論>
 重篤な症例においては,高度な循環モニタリングを行い心拍出量の計測をすることを推奨する.
 
 

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