1. 2019年10月7日 安部先生担当

2019年10月7日 安部先生担当

最終更新日:2020年01月06日

抄読会

Persistent Postsurgical Pain Following Thoracotomy: A Comparison of Thoracic Epidural and Paravertebral Blockade as Preventive Analgesia
開胸術後の術後慢性疼痛:胸部硬膜外麻酔と傍脊椎ブロックの比較
 
Pain Medicine, 20(9), 2019, 1796–1802
 
【はじめに】
開胸術後の術後慢性疼痛は発生率が高く(30-91%)多くの関心が向けられている。胸部硬膜外麻酔および傍脊椎ブロックは開胸術後の急性期の鎮痛として確立されているが、術後慢性疼痛に与える影響の情報は不足している。本研究の目的は、二つの手技が術後疼痛に与える影響とリスクファクターを評価することである。
 
【方法】
開胸術で肺切除術を受けた後6カ月間、遷延痛の評価と日常活動に与える影響をfollow-up可能な成人を対象に調査した。肺切除歴や、follow-up期間内の複数回手術を受けた患者は除外された。
 術前に硬膜外カテーテルまたは術中に術者によって傍脊椎カテーテルが留置された。両群は術中に0.125%ブピバカインを10-15ml投与(10-20ml/h)され、術後鎮痛として硬膜外麻酔群は、0.125%レボブピバカイン+フェンタニル2μg/mlを5-15ml/hで、傍脊椎ブロック群は0.125%レボブピバカイン+オピオイドPCAが投与された。胸部硬膜外麻酔と傍脊椎ブロック(+PCA)はチェストドレーン抜去時に中止された。
 6か月後の痛みをNRS(0-10)で、神経障害性疼痛をLeeds Assessment of Neuropathic Symptoms and Sign(S-LANSS)で、QOLをEQ-5Dで評価した。
 
【結果】
 開胸術後82人の患者が評価対象となった(硬膜外麻酔n=36、傍脊椎ブロックn=46)。

全体の遷延性術後痛は59.8%、そのうち49%はS-LANSSで神経障害性疼痛の診断を満たした。2群間で遷延性術後痛の有病率に差はみられなかった。中等度から重度の術後遷延痛においても群間で差はみられなかった。
 6カ月の時点で痛みを有する人は、痛みなしと比較して有意に健康状態が障害されていた。神経障害性疼痛を有する場合、神経障害性疼痛のない遷延性術後痛よりQOLが低下していた。



【考察】
 開胸手術に対する胸部硬膜外麻酔と傍脊椎ブロックでは、術後6カ月の遷延性術後痛と神経障害性疼痛の発生に違いはみられなかった。59.8%で遷延性術後痛を有し、それは著明なQOL低下につながった。遷延性術後痛は、程度に関わらず、著明に健康状態およびQOLの低下を引き起こした。神経障害性疼痛の診断基準を満たす場合、神経障害性疼痛のない遷延性術後痛よりQOLが悪いことを示している。
 本研究の若年と遷延性術後痛の関係は、他の手術でも報告されている遷延性術後痛のリスクファクターと類似していた。急性期の痛みスコアと手術時間もまた、遷延性術後痛の有病率および中等度から重度の遷延性術後痛と関連することを示した、しかし、年齢と手術時間で調整を行うと、本研究においては急性期の痛みと神経障害性疼痛への移行に関連性はなかった。
遷延性術後痛の半数が神経障害性疼痛であることから、それぞれ2つは異なる病態、過程であると考えられた。神経障害性疼痛を有する場合は、著しいQOLの低下をきたすため、急性期の神経障害性疼痛を評価することが、早期対応するために重要である可能性が考えられた。
 
【まとめ】
本研究の患者の半数以上が開胸術後6ヶ月で遷延性術後痛を有し、これらの患者の約半数が神経障害性疼痛の診断基準を満たした。傍脊椎ブロックか胸部硬膜外麻酔かの選択は、遷延性術後痛に関して影響を与えなかった。開胸術の遷延性術後痛の有病率は高く、QOLに大きな影響を与えていた。神経障害性疼痛を有する場合は、よりQOLが低かった。
 

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