1. 2019/10/28 前原先生担当

2019/10/28 前原先生担当

最終更新日:2019年12月11日

抄読会

Efficacy of intravenous lidocaine in improving post-operative nausea vomiting and early recovery after laparoscopic gynaecological surgery
腹腔鏡下婦人科手術後のPONVおよび早期回復の改善におけるリドカインの静脈内投与の有効性
experimental and therapeutic medicine 17: 4723-4729,2019
 
背景
腹腔鏡手術には、痛みが少なく、回復が早く、不快感が少ないという利点があり、近年この方法を選択する患者が増えている。しかし、腹腔鏡手術は術後の吐き気と嘔吐(PONV)のリスクの高い外科的要因の1つである。PONVの発生率は全身麻酔後約30%、腹腔鏡手術後50〜70%であることが言われている。女性であることがPONVのリスク因子であり、婦人科腹腔鏡手術のための全身麻酔後は、約71〜80%の患者がPONVを発症するという報告がある。リドカインの静脈内投与はPONVの発生率を著しく低下させることが示唆されている。一方、術後の回復に関してはリドカインが改善を促さないという報告もある 。
本研究では、婦人科腹腔鏡手術後の悪心、嘔吐およびQoR-40に対するリドカイン注入の効果を評価した。
 
方法
合計40人(ASA-PS:I〜IIの30〜50歳)の患者を20人ずつ、リドカイン投与群(グループL)と非投与群(グループC)の2群に分割した。
グループLには1%リドカインを投与、グループCは等量の生理食塩水を投与した。
すべての手術は午前中に行われ、その日の最初の手術であり、追加手順なしに標準化された手順に従った。
手術と看護は同じチームによって行われた。
以下の特性を持つ患者を除外:
心血管疾患、代謝性疾患、腎疾患、肝疾患、神経障害、酸塩基平衡電解質障害、ショック、妊娠、タバコ使用歴、PONV歴、消化管障害、手術前48時間以内の制吐薬の使用、抗コリン薬の慢性使用またはオピオイドによる慢性治療、および手術時間が30分未満または90分以上の症例
 
麻酔方法
患者は、手術前夜の深夜12時以降、および麻酔導入の30分前に、ミダゾラム(0.04 mg/kg)およびスコポラミン(0.3 mg)の内服を行い、麻酔導入の直前にグループLの患者はリドカイン(1.5 mg/kg)の静脈内ボーラス注射を受けた。グループLでは、リドカイン注入は手術中2 mg/kg/hの速度で持続投与した。グループCでは、同様の方法で生理食塩水を投与した。麻酔導入する前に、患者の心電図、心拍数、および酸素飽和度を継続的にモニタリング、血圧は5分間隔で記録した。麻酔導入時、気管挿管前にプロポフォール(2 mg/kg)およびフェンタニル(4 µg/kg)を静脈内投与。両グループで、気管挿管時にシス-アトラクリウム(0.2 mg/kg)を使用、シス-アトラクリウムはすべての患者の術中筋弛緩にも使用された。術中維持はプロポフォール(70〜90 µg/kg/min)とレミフェンタニル(0.2〜0.5 µg/kg/min)で行った。両グループともBISを40〜60以内に維持するよう麻酔薬調整した。乳酸リンゲル液(8ml/kg/h)にて補液した。
結果
グループLの患者に周術期に投与されたレミフェンタニルの総用量は、グループCに与えられた用量よりも有意に少なかった。平均動脈圧と心拍数は、グループLの方がグループCよりも低かった。回復時間と抜管時間は、グループCがグループLよりも短かった。グループCの最初の排ガス時間および排便時間は、グループLのそれよりも長かったが、入院期間の長さはグループLでは有意に短くなかった。
手術後1時間と24時間で、両グループ間でPONVの発生率に有意差はなかった。ただし、手術後6時間ではグループCと比較してグループLはPONVの発生率が有意に低かった。PONVの重症度は、どの時点でも有意差はなかった。
グループCと比較して、グループLで使用された制吐薬の数は少なかった。
グループLのVASスコアは、手術後18、24、30、36時間でグループCのスコアと比較して低かった。
RSSスコアは、抜管後のどの時点でもグループ間で有意差はなかった。
グループCのQoR-40スコアは、手術後1日および3日のグループLのスコアと比較して有意に低かった。5日目に有意差は観察されなかった。
 
考察
 
グループLではグループCに比較し、回復時間、抜管時間は長かったが、RSSスコアは有意差はなかった。この結果より、リドカインは挿管の刺激は緩和するが、抜管後の回復には影響を与えないと考えられる。
術中牽引および気腹圧を含む刺激は、腸管膜神経叢を刺激し、腸機能の損傷につながる可能性が示唆されている。静脈内リドカインは腸間膜神経叢をブロックすることにより腸平滑筋を興奮させ、腸機能の回復に有益である可能性がある。本研究では、最初の放屁時間、排便時間はグループLのほうがグループCよりも早く、リドカインが腸機能の早期回復に役立つことが示唆される。
本研究の結果は、PONVの発生率はグループLでグループCよりも有意に低いことを示唆した。これは、次の要因が考えられる。
 ・麻酔からの回復期間中の患者の覚醒の改善
 ・オピオイド薬の使用の削減
 ・周術期の血行動態安定性の維持
 ・術後の痛みの軽減および胃腸管の早期回復
 
本研究は、グループLの方が手術後1日目と3日目でグループCよりも回復の質がはるかに優れていることを示した。ただし、回復の質は、手術後5日のグループ間で有意差はなかった。したがって、静脈内リドカインは、内視鏡婦人科手術を受けている患者の早期の回復を促進する可能性がある。
 
結語
腹腔鏡下婦人科手術を受けている患者に使用される静脈内リドカインは、PONVを安全かつ効果的に予防し、患者の早期回復を促進する可能性がある。