教授ブログ「まなぶろぐ」

琉球大学医学部麻酔科学教室 教授:垣花 学(かきのはな まなぶ)のブログです。

リオデジャネイロオリンピックが終わって

2016-09-05

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リオデジャネイロオリンピックでは、前半戦のみならず後半戦も日本人の活躍に日本中が盛り上がりました。特に、陸上男子400mリレーは、久しぶりに鳥肌が立つほどの興奮を覚えました。400mリレーの日本選手は、それぞれのベストタイムが10秒台であり、9秒台の選手を並べたジャマイカ、米国、イギリスそしてカナダなどと比較するとかなり不利な状況でした。しかし、この苦境を凌駕したのが巧妙かつ完璧な日本が誇るバトンパス! 結局、日本は米国を抑え2位となり銀メダルを獲得できたのです。各々をみると成し遂げられなかったことを、個々を繋ぐことで結果に結びつけた・・、これは医療にも役立つと思いました。
医師は、患者さんひとりひとりに対し十分な医療を提供しています。麻酔科医である我々も、毎日毎日、次から次へとやってくる症例に安全な麻酔を提供しています。しかし、この次から次へと当たり前にやってくる症例を”こなし”てしまってはいないでしょうか? 例えば、先週の水曜日の症例を覚えていますか? 最近麻酔管理した腹腔鏡下結腸切除術の症例を覚えていますか? あるいは、あなたがこの3か月間に麻酔管理した症例の中で最も多く管理した手術を把握していますか? なかなか思い出せないのではないでしょうか? 「当たり前のようにやってくる症例を当然の仕事として麻酔管理する」という状況は、言い過ぎかもしれませんが「毎日食べている食事」のような感覚になってしまうかもしれません。(先週の水曜日の夕食を思い出せないのは私だけでしょうか?)
医師として、ひとりひとりの症例に全力を注ぐことは当然ですが、それが”こなす”ことになってしまうことは非常に残念なことです。では、どうすればいいのか? 陸上男子400mリレーを思い出してください。”おのおのでは成し遂げられなかったことを、個々を繋ぐことで結果に結びつけた”ということです。今、琉球大学附属病院麻酔科では、毎週金曜日の7:20から1週間の症例の”レビュー”(教室員の皆さんは「振り返り」といっていますが)を行っています。そこでは、術前カンファレンスで挙がった問題点に対する対処と結果、術中に発生した問題点などを皆で確認しながら振り返っています。そうすることで、少なくとも1週間の症例が”点”ではなく、”線”として記憶に残ります。さらに、このレヴューではPONV、シバリング、嗄声そして術後疼痛などの合併症を表として一見できますが、それぞれの合併症が頻発する症例などを把握することもできました。これは思いもよらない副産物ですが、これも”おのおのでは成し遂げられなかったことを、個々を繋ぐことで結果に結びつけた”だと思っています。
これからも”おのおのでは成し遂げられなかったことを、個々を繋ぐ”ことも視野に入れたカンファレンスを続けていきたいと思っています。
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