教授ブログ「まなぶろぐ」

琉球大学医学部麻酔科学教室 教授:垣花 学(かきのはな まなぶ)のブログです。

”もっている”人

2018-09-23

今年の夏は全国的に猛暑となり、おかしなことに沖縄が避暑地になってしまいました。そんな猛暑の時期の少し前に開催されたFIFAワールドカップサッカーロシア大会を終えて3ヶ月が経とうとしています(もう、忘れてしまったかもしれませんが・・・)。我が日本代表チームは、世の中の評価(期待?)を裏切り、予選でコロンビアを倒し決勝トーナメントへの勢いをつけてくれました。このロシア大会の2ヶ月前に日本代表監督がハリルホジッチ氏から西野朗氏に電撃的に交代され、世界的には日本代表が予選トーナメントを突破するのは困難と考えられていました。

ハリルホジッチ氏から日本代表監督を引き継いだ西野朗氏は、早稲田大学サッカー部出身で在学中に日本代表に選出された輝かしい選手時代を送っていますが、それよりも私は指導者としての力量に注目していました。1996年のアトランタオリンピックで当時の日本代表(前園、中田英など)がブラジル代表を破った“マイアミの奇跡”というものがありましたが、そのときの日本代表監督も西野朗氏でした。1998年から就いた柏レイソル、2002年からのガンバ大阪でもJリーグ優勝やナビスコカップ優勝など、輝かしい実績を挙げていました。この実績を知っていたので、ハリルホジッチ監督解任後に西野朗氏が監督に就任したとき、個人的には期待していました。ですので、コロンビアを破った時には“やっぱり西野朗氏は正解だった”と確信しました。

なぜ西野朗氏はこんなに好成績を挙げるのでしょうか?西野朗氏の大学時代の後輩である日本代表元監督の岡田武史氏が、ワールドカップロシア大会のテレビ解説の中でこのようなことを話してくれました。「皆さんは西野さんは“(運を)もっている”といいますが、確かに西野さんはもっていると思います。でも、西野さんが常に“もっている”と評価されるのは、いつも何かにチャレンジしているからです。チャレンジしないと何ももつことはできないんです。」

この解説を聴いて、いろいろなことが腑に落ちました。ただ日常の時間を過ごすのではなく、目標を持ってそれにチャレンジする・・・・、チャレンジしないと何も達成できない・・・。

皆さんの周りに“もっている”人がいると思います。その人も常にチャレンジしていると思います。医局員の皆さんにも、チャレンジ精神を忘れずに“もっている”人になってもらいたいと思っています。

オンリー1を目指して

2018-05-29

4月30日にアップした“まなブログ”「ものの価値」の中で、琉球大学医学部麻酔科はオンリー1を目指すべきだという趣旨で述べました。2000年前後には、「琉球大学医学部麻酔科といえば・・・・」とイメージしてもらえるように、大血管手術における脊髄虚血の基礎研究、臨床研究そして症例報告を積極的に推し進めてきました。今では、脊髄虚血といえば必ずといっていいほど琉球大学医学部麻酔科という名前が出てくるまでになったと自負しています。それから18年が経過した今、地方大学医局のひとつである琉球大学医学部麻酔科が何を持ってオンリー1になれるでしょうか?
臨床、教育そして研究は、大学の責務であることは言うまでもありません。この3本柱のどれを重点とするかが、その医局の特徴になります。ちなみに、琉球大学医学部麻酔科は教育を第一とした運営を行うことにしています。医局のみならずどの組織でもオンリー1を目指すとは、「他のだれとも違う」ことを目指すことだと思います。「他の誰とも違う」というのは、「独創」とも言い換えることが出来ると思います。この中の「独」はいわゆるオンリー1に通ずるものでありますが、「創」というのは「つくりだす」という意味になります。オンリー1を目指すには、この「つくりだす」こと、いわゆる「イノベーション」が必要だと私は思います。
「イノベーション」というとハードルが高いと感じますが、例えば研究から生み出された成果は「イノベーション」の宝庫だとおもいます。もっとハードルを下げるとしたら、「日頃の不自由さ・不便さ」を探し出すことから「イノベーション」につながると考えられます。特に、我々が働いている手術室やICUには多くの「不自由・不便」があり、我々の周りには「イノベーション」の可能性があふれていると思います。例えば、ビデオ喉頭鏡であるMcGrathは、昔から変わっていない喉頭鏡のダサいデザインに築いたデザイン学校の学生が卒業作品として作り上げたものであり、これも「イノベーション」だと思います。何気ない「不自由さ・不便さ」を認識し、それを収集してその対策あるいはそれを解決できる工夫などを考え出せれば、それは「イノベーション」につながります。
また、琉球大学医学部麻酔科の実験室では、他にない研究を進めており、近いうちに特許申請につながる可能性のある研究を行っています。非常に大きな楽しみです。
これまで大学では「イノベーション」から少し離れたところに立ち位置を置いていました。しかし世界的にはアカデミアの研究と産業をつなげる産学連携が進んでおり、さらには大学発のベンチャーの起業が盛んに行われています。いま思うことは、ひとつでもいいから「イノベーション」を出したいということです。それがオンリー1になることだと思います。
 

ものの価値

2018-04-30

「人の価値って何だろう?」と、ふと考えることがありました。その人の道徳観?。人間性?、学歴?、収入?、社会的地位?・・・・。もし、人間の価値を示すパラメータがあったとしたら、そのパラメータを見て「自分は価値ある人間だ。うれしい」と本人は思うのでしょうか?

 なぜこのようなことを考えたかというと、ポリクリの学生さんから「なぜ麻酔科医になったのですか?」と尋ねられたからです。このときいつも答えるの内容は「病院で麻酔科医がひとりいなくなると約500症例の手術に対応できなくなる。これは他の科の医師が変わりに出来ないことだから、麻酔科医の価値はより高いことに気がついたから。」というような内容で答えていました。そういうわけで「価値とは?」と考えることがありました。

 学歴、収入あるいは社会的地位の価値は、それぞれの比較対象より高いか低いかということがそのパラメータになります。つまりいわゆる相対的比較ですので、ナンバー1になることが究極かもしれません。道徳観や人間性などはそれにスケーリングがないので、絶対的比較の対象となります。つまり、そのパラメータはオンリー1であるかどうかだと思います。

 ちなみに、2003年にSMAPの「世界にひとつだけの花」が発売され、その中の“ナンバー1にならくてもいい、もっともっと特別なオンリー1”という歌詞が印象的ですが、私は2001年のノーベル賞を受賞した野依良治先生の受賞インタビューの記事でこのフレーズをみました。このフレーズは、そもそも京都大学の考え方のようですが・・・。

 麻酔科医個人の価値は、医療界の中でやはり“オンリー1”的なものだと思います。では、麻酔科医の集団のひとつである麻酔科学教室の価値はナンバー1でしょうかそれともオンリー1でしょうか? さらに大きなもの、たとえば病院や大学の価値はどちらでしょうか? もっと大きな視点で考えると、自治体(市町村)や国の価値はどちらで判断すべきでしょうか? その答えを出すのはなかなか難しいし、「人の価値」を決めることはさらに難しいことだと思います。

 ただ、言えることはナンバー1になることはかなり難しくこれは限られたものですが、オンリー1というのは不可能なことではありません。教授という立場ですから、教室の価値を高めるあるいは価値ある方向性に進めることは私の責務になります。では、我々はどこに進むべきなのか、やはりオンリー1を目指すべきだと思います。 その戦略についての私の考えは後日述べたいと思います。

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