1. 4月24日 新垣かおる先生担当

4月24日 新垣かおる先生担当

最終更新日:2017年05月09日

抄読会


背景:
肺のリクルートメント(LRMs)を行うと、1回拍出量が減少する。LRMsによる1回拍出量の減少の程度(ΔSV-LRM)は、前負荷と相関し、輸液反応性の指標となるのではないか?
研究デザイン:
患者;18歳以上、予定脳外科手術、ただし頭蓋内圧亢進なし
除外;不整脈、肺疾患、EF<50%、右心不全(d/t SAS、COPD、肺高血圧)、BMI<15、40<BMI
橈骨動脈に動脈圧ラインを確保し、心拍出量のモニタリングを行う。
麻酔;プロポフォール、レミフェンタニル、いずれもTCIを使用、昇圧薬は使用しない、TCIの変更を要した症例は除外
調節換気;1回換気量 6〜8ml/kg ibw、PEEP 5cmH2O、呼気二酸化炭素濃度 30〜35mHg、SpO2 >96%、I:E = 1:2
観血的動脈圧波形からSV、PPVをモニタリング
LRMsと輸液負荷は麻酔科医の裁量で行う。
評価;それぞれの時刻で、4つの項目(HR、MAP、SV、PPV)を測定した。輸液負荷後のSVの10%以上の増加を「輸液反応性あり」群とした。

統計解析:得られたデータは平均値±標準偏差または中央値で表した。
パワー検定では、POC曲線下面積で0.25の差異を検出するために必要な症例数は最低28であった。輸液負荷後のSVの10%以上の増加を輸液反応性ありとした。LRMと輸液負荷時の各パラメーターの比較はShapiro-Wilk testとFisher Snedecor testに続けてPaired t-testを行った。p値 < 0.05を統計学的に有意差ありとした。
結果:28人中16人が輸液反応性あり、12人がなしとなった。プロポフォールの効果部位濃度は4.2±1.2 μg/ml、レミフェニタニルの効果部位濃度は4.7±1.1 ng/mlであった。LRMで両群とも、SVとMAPが減少した。輸液負荷後に、
「輸液反応性あり」群でPPVが低下した。また、ΔSV−LRMとΔSV-VEでは相関関係がみられた。
輸液負荷の反応性の予測;SV-LRMの30%以上の減少で、輸液反応性ありと予測する場合、感度 88%、特異度 92%である。PPV6%以上で輸液反応性ありと予測する場合、感度 69%、特異度 75%である。これら4項目それぞれについてROC曲線を作成すると、上2つはAUC 0.96、下2つはAUC 0.5となり、
輸液負荷の反応性を予測できるものは、ΔSV-LRMとPPVの2項目となる。
この研究で言えること:
  1. LRM中にSVが30%以上減少するなら、0.9%生理食塩水250mlの負荷は効果がある。
  2. ΔSV-LRMはPPVよりも輸液反応性の指標として優れている。
  3. ΔSV-LRMとΔSV-VEは強い相関関係にある。Discussion
    LRMは、心拍出量と血圧を減少させるため、輸液負荷や血管収縮薬の使用が必要になるときもある。Limらは、豚を用いた研究で、心拍出量に影響を与えるのはLRMではなく、LRM後のPEEP負荷だと述べている。LRMに耐えうるかどうかは循環血液量に大きく依存していると考えられており、Nielsenらは、動物実験でそれを裏付ける報告をしている。今回の研究では、LRMの影響は輸液負荷を行う指標となることを強調したい。術中の輸液負荷の基準は経験則によるものが多い。最近は、周術期に肺保護換気が行われる風潮にあるので、動的指標を使用するのは難しいかもしれない。PPVなどの、呼吸性変動を利用した動的指標はカットオフ値が低い場合には信頼できない可能性が示唆されている。今回の研究でも、6%では輸液反応性に乏しい患者も含まれたが、8%だとすべての患者で輸液反応性ありとなった。本研究では、PPV 4〜7%のグレイゾーンに患者の62%が含まれているが、413人を対象としたCannessonらの報告ではグレイゾーンは9〜13%、556人を対象としたBiaisらの報告では4〜17%である。われわれの研究でグレイゾーンの値が低いのは、他の報告と比べて1回換気量が少ないためと考えられる。右心不全や腹圧が上昇するような症例を除外したことも原因として考えられうる。今回の研究でわかったことのひとつに、LRMによるSVの変化こそが輸液反応性の指標となり、LRMによる血圧やPPの変化はあてにならないということである。LRMを用いた輸液反応性の評価を行う利点として、低1回換気量換気を行っている場合でも、指標となりうるということである。
     
     Limitation:
    仰臥位での報告であること
    不整脈、右心不全、肥満など、除外症例があること
    LRMの圧と時間がほかの研究と異なること
    SVをpulse contour analysis technologyで算出していること
    SVが輸液や人口呼吸器の設定変更で変わる可能性があること
    SVはProAQTを用いて算出し、12秒ごとの平均値を毎秒更新していること
    サンプルサイズが小さいこと

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