1. 5月22日 野口先生担当

5月22日 野口先生担当

最終更新日:2017年05月30日

抄読会

The association between caudal anesthesia and increased risk of postoperative surgical complications in boys undergoing hypospadias repair
-尿道下裂における術後合併症と仙骨硬膜外麻酔の関係-
Paediatr Anaesth. 2017 Mar 27. [Epub ahead of print]
 
<はじめに>
尿道下裂の外科的術後合併症の頻度は5~10%とされる。近位型で頻度が高く、尿道口の位置との関係を調べた研究が多い。最近、仙骨硬膜外麻酔で術後の尿道皮膚瘻の頻度が増えるとの結果が報告され、同様の報告が他の2つのグループからも出ている。当施設での仙骨硬膜外麻酔と術後合併症の関係を後ろ向きに検討した。
 
<方法>
・2001年~2014年に行われた尿道下裂症例を後ろ向きに調査
・単施設( Duke大学 )、同一術者
・除外:二期的手術、再手術、術後のフォローが6か月未満
 
<手術と麻酔>
・全身麻酔と仙骨硬膜外麻酔(0.25%ブピバカインor 0.2%ロピバカイン、投与量2-3㎎/㎏)もしくは術野での陰茎ブロック(0.25%ブピバカインor 0.2%アナペイン)を併用
・遠位型の一部でリングブロックを併用
・ほとんどの症例で止血目的に10万倍Epi入り1%リドカインを使用
・仙骨硬膜外麻酔で使用した薬液の内訳:ブピバカイン34 例(15%)、ロピバカイン186 例(81%)、不明 10 例(4%)
・他に、仙骨硬膜外群の局所麻酔薬にエピネフリン153 例(67%)、クロニジン171 例(74%)が添加
→これら局所麻酔薬、添加物、その他薬剤の使用と術後合併症の発生率に相関なし
 
<結果>
・対象は 395 例、仙骨硬膜外麻酔230 例(58%)、陰茎ブロック165 例(42%)
・遠位型326 例(82%)、平均年齢 15.6 か月(中央値 12、IQR 9-16)、平均体重 10.4 ㎏(中央値 9.6、IQR 8.7-11.1)、手術時間 139.7 分(中央値 134、IQR 108-164)
・瘻孔、創離開といった外科的合併症が発生したのは395例中22 例(5.6%)
このうち21例(95%)が仙骨硬膜外群(OR 16.5、P=0.003、重症度別では遠位型が9 例(2.8%)、近位型が13 例(18.8%)と近位型で多かった
・仙骨硬膜外以外に相関を認めたのは重症度(遠位型 or 近位型)(OR 8.2、P<0.001)、手術時間(OR 1.01、P<0.001)、手術時期(2008年以前)(OR 3.0、P=0.03)だったが、多変量解析の結果、独立したリスクファクターは仙骨硬膜外麻酔(OR13.4、P=0.01)と重症度(OR6.8、P<0.0001)であった
 
<考察>
仙骨硬膜外麻酔の併用は尿道下裂術後の外科的合併症の頻度を増加させた。メカニズムについては不明で、より大規模な多施設共同研究で調査中である。Kundraらが最初に術後の尿道皮膚瘻と仙骨硬膜外の関係について報告したが、もともとは陰茎ブロックの有用性を示す研究であった。その後Saavedraらが192例の尿道下裂手術で術後合併症が11例あり、うち9例(81%)が仙骨硬膜外麻酔であったと報告した。Kimらは342例を調査し同様に仙骨硬膜外で合併症が多かった(25% vs 15%)と報告した。反対にZaidiらは仙骨硬膜外の使用とは関係がなく、尿道下裂の部位や術野でのエピネフリンの使用が術後合併症と関係すると報告した。Bragaらは周術期のテストステロン使用、近位型、仙骨硬膜外が関係するとしたが、多変量解析で有意だったのは近位型のみで、仙骨硬膜外は交絡因子のひとつであると報告している。
仙骨硬膜外麻酔は、術後の鎮痛薬の減量、ストレスホルモンの分泌抑制、患者家族の全体的な満足度向上等の利点があり、小児麻酔で広く用いられている。包茎手術等では陰茎ブロックや全身麻酔単独と比べ術後鎮痛に差はないが、尿道下裂のような大きな手術では鎮痛効果に差があるため施行されることが多い。仙骨硬膜外施行の判断は研修医の有無(教育目的で増加)や術後救急センターへの移動や麻酔看護師の関与(減少)でなされることが多い。修復の難易度や予定手術時間も影響したと思われ、本研究のlimitationのひとつである。
術後合併症が仙骨硬膜外で増えるメカニズムは不明であるが、血流の変化が関与している可能性がある。一般的に神経ブロックでTh5-L1まで遮断が及ぶと交感神経系が抑制される。これによる血管緊張の低下は、陰茎を含む下半身への静脈血の鬱滞を招くかもしれない。これはKundraらの報告の中での仙骨硬膜外ブロック後に鬱血により陰茎が27%腫大したとの結果の説明になるかもしれない。血管拡張による陰茎の腫大が術中の修復や術後の創傷治癒に影響した可能性がある。
Limitation:単施設、同一術者でのレトロスペクティブ研究で普遍性に乏しい。術後6か月以降のフォローがない。合併症が起きそうな症例=手術時間が長くなる重症例で仙骨硬膜外を選択している可能性。
 
<結語>
仙骨硬膜外麻酔は尿道下裂術後の外科的合併症を増加させた。より大規模なRCTや多施設共同研究が必要がある。