1. 2019/4/15 新垣かおる先生担当

2019/4/15 新垣かおる先生担当

最終更新日:2019年05月08日

抄読会

Randomized comparison of three guidewire insertion depths on incidence of arrhythmia during central venous catheterization

Jung-Man Lee, Jiwon Lee, Jin-Young Hwang, Jee-Eun Chang, HeyrimKim, Sohee Oh,Eun-Ah Oh, Seong-Won Min
 
American Journal of Emergency Medicine 35 (2017) 743–748
 
研究の背景
  • 中心静脈カテーテル留置時に、ガイドワイヤーでまれに致死的な不整脈が誘発されることがある。ガイドワイヤーの深さについて検証した。
  • ガイドワイヤーが深く挿入され、不整脈が誘発されることはよくある。たいていの場合、ガイドワイヤーをひくことで消失し、処置を必要とすることはない。しかし、まれに、心室細動、心室頻拍を生じ、抗不整脈薬や電気的除細動を必要とすることがある(筆者らの施設だと、29ヶ月間で、中心静脈カテーテル留置症例が1512例、うち致死的不整脈を伴った症例が2例(0.13%)、未発表データ)。
  • 最近の報告では20cmを超えない挿入が勧められているが、習慣的に15cm程度を目安にしている医師も多い。
  • この研究は、最適なガイドワイヤー挿入長を見つけるものである。
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研究の概要
  • 無作為二重盲検化前向き研究
  • 予定手術、右内頚静脈から中心静脈カテーテル留置を予定している患者が対象
  • ガイドワイヤーの深さ 15cm、17.5cm、20cmの3群で観察
  • 不整脈を記録
  •  
対象患者
  •  成人の予定手術患者69人、右内頚静脈から中心静脈カテーテル留置予定
  •  2015年9月〜2016年3月
  •  洞調律、ASA PS Ⅰ〜Ⅱ
  • 以下は除外
    •  不整脈
    •  電解質異常
    •  SVが「首が短い」と判断した患者
    •  右頚部に感染巣のある患者
    •  右頚部の穿刺部位に近いVPシャント、もしくはポートのある患者
    •  
無作為盲検化
  •  患者は登録後、コンピュータで無作為に、A、B、Cの3群に分けられる。
  •  処置当日、担当看護師が麻酔科上級医にだけA、B、Cのどの群かを伝える。
  •  麻酔上級医のみが、ダイレーション前のガイドワイヤー挿入長を知る。
  •  麻酔担当医は中心静脈カテーテル留置操作を行う。
入室から穿刺まで
  •  two-lumen ARROWg+arBlue® カテーテルセットを使用した。
  •  7Fr、カテーテル長20cm、ガイドワイヤーはJ-shaped、長さ60cm。
  •  前投薬なし、ベーシックモニタリング後、プロポフォール2mg/kg、フェンタニル100μg、ロクロニウム0.6mg/kgを投与し挿管、挿管後は機械換気とし、セボフルランで維持した。観血的動脈圧ラインを留置し、手術台は15°以下のヘッドダウン、30°以下の左ローテーションを行った。測定はデジタル水平器で行った。

primary outcome:中心静脈カテーテル留置の間に、ガイドワイヤーによって不整脈が誘発されたかどうか
  • 患者情報:性別、身長、体重、既往歴(高血圧、糖尿病、腎機能障害)、術前血液検査(BUN、Cre、K)
  • a simple pilot observation
    • 右内頚静脈穿刺、ガイドワイヤー挿入長で比較
    • 31人で観察し、以下の割合で不整脈を検出
      •  〜15cm群:1/10
      •  17〜18cm群:4/10
      •  〜20cm群:7/11
      • α水準0.05、β水準0.10に達するために69症例(各群23人)必要

統計
  • 得られた値は平均値±標準偏差で表した。群間比較は、カイ二乗検定およびFisher’s exact testで行った。p値 < 0.05を統計学的に有意差ありとした。
  • 統計処理には、SPSS Statistics 21.0 software (IBM Corporation, USA)を使用した。

結果
カテーテルの迷入や事故抜去はなかった。
1年目の麻酔科医6人に、中央値4.5症例となるようにランダムに患者を振り分けた。
2年目以上の麻酔科医18人に、中央値1.5症例となるようにランダムに患者を振り分けた。
無作為化された69人のうち、観察終了後に除外となった者はいなかった。
 
腎機能障害を有する人数、術前のBUN、Cre値で偏りがでた。
 
不整脈は、69人中、42%にあたる29人にみられた。
15cm群では、23人中8人、17.5cm群では、23人中8人、20cm群では、23人中15人、に不整脈が観察された。
上室性期外収縮が20例、心室性期外収縮が7例、loss of one beatが1例、HR 144の洞性頻脈が1例みられた。
ほとんどすべての患者で、ガイドワイヤーをひくと不整脈は即座に消失した。洞性頻脈を呈した患者のみ、1分半ほど持続したが、自然に消失し、処置を必要とはしなかった。
ガイドワイヤーによる不整脈の出現率は、3群で違いがあった。(p=0.019)
 
患者要因や、手技を行った者の習熟度による有意差はなかった。
(ここで、筆者らは、有意差の出そうな身長という要素に注目している。そこで、ガイドワイヤー挿入長で分けた3群をそれぞれ、小さい(<158cm)群、平均(158〜166cm)群、大きい(>166cm)群)に分類してデータ解析を行った。)
 
20cm群で、小さい群と大きい群を比較すると不整脈の出現率に有意差が出た。
 
Discussion
  • 結果として、ガイドワイヤーを20cm挿入すると不整脈が出現しやすい傾向にあった。
  • ガイドワイヤーを必要最低限よりも2〜3cm長めに挿入することが推奨される理由は2つある。うっかり抜けないためと、カテーテルによる心臓穿孔を防ぐためである。しかしこのエビデンスは弱い。それどころか、カテーテル留置長と同程度でもガイドワイヤーの先端がJ型になっているため、カテーテルによる心臓への刺激は防げるかもしれない。
  • 右内頚静脈からの最適なカテーテル留置長を決定しようと試みるたくさんの報告がある。これらの多くは身長をもとに研究されている。最近では、留置長を9〜12.5cmと短めに推奨するものもある。この報告では、ガイドワイヤーの挿入長は決して長くある必要はないことを暗に示唆している。
  • ガイドワイヤーの挿入長を20cmまでと推奨する報告があるが、無作為化して比較したものではない。そのうえ、不整脈の出現率は20cmよりも16〜19cmで多くなっている。ガイドワイヤーの目盛りの有無で不整脈の出現を比較しているのだが、新たな問題が提起されたと言ってもいいだろう。
  • 透視で洞房結節の位置を確認し、18cm未満を推奨する報告もある。
  • 今回の研究では、15cm群と17.5cm群で有意差を見い出せなかったが、それでも両群で不整脈の出現率が30%にのぼる。ダイレーション時に強い力がかかりガイドワイヤーが進んだ可能性や、強い力で刺入部を圧迫した可能性があるため、不整脈の原因が迷走神経反射である仮説もたてられる。
  • 尿毒症患者に中心静脈カテーテルを留置しようとしたところ致死的な不整脈が出現したという報告がある。また、BUN、Creが高い患者では中心静脈カテーテル留置手技で不整脈が出現しやすいとも言われている。今回、術前の採血の結果とも照らし合わせてみたが、われわれのサンプルサイズではなんともいえない。
  • 目盛りのあるガイドワイヤーは、深く入りすぎないと言われているが、目盛りのないガオドワイヤーもたくさんある。今回の研究では、10cmごとに目盛りがあり、35cmのところで大きなマーキングのあるガイドワイヤーを使用した。10cmから20cmのところに2cm間隔で目盛りがあるといいかもしれない。

Limitation
  • 予想に反して、不整脈の出現率は、手技を行う者の習熟度とは関連しなかった。ただし、麻酔科1年目の医師らはすでに50例の、右内頚静脈からの中心静脈カテーテル留置を行った経験があるからとも言える。次回は、もと経験値の低い医師で、より大規模に行いたい。
  • 身長は、適切なガイドワイヤー挿入長を決める要因になり得るかもしれないが、この研究は、身長から適切なガイドワイヤー挿入長を決めるというデザインのものではない。身長で分けたサブグループの規模は小さく、結果をだせるほどのものではないが、20cm群でみると、小さい群はより不整脈が出現する傾向にあった。たとえ身長が180cmを超える患者であっても、ガイドワイヤー20cm挿入は、やりすぎかもしれない。

Conclusion
  • 右内頚静脈からの中心静脈カテーテル留置手技で、ガイドワイヤーの挿入長を15cm、17.5cmとした場合は、20cmとした場合よりも不整脈の出現が少なかった。