教授ブログ「まなぶろぐ」

琉球大学医学部麻酔科学教室 教授:垣花 学(かきのはな まなぶ)のブログです。

アメリカ麻酔学会 その3

2023-10-17

 

アメリカ麻酔学会の2日目が始まりました。
連日、朝晩は我々にとっては寒いサンフランシスコです。
サンフランシスコといえば”霧”ですが、本日の朝はユニオンスクエア付近も霧でビルの上層階が見えなくなっていました。
何だか不吉な予感・・・・。

そのような中、朝8:30から新里先生御一行が、羽賀先生のポスターを貼ってくれました。
羽賀先生は、残念ながら頸椎ヘルニアで渡米がドクターストップとなったので、私が発表することになりました。羽賀先生が、ASAからの指示通りの大きさで作成してくれましたが、もっと大きく作っても問題なかったような気がします。文字の大きさや太さは完璧!!
日本人のポスターでは、インチとセンチを間違えてかなり小さめのポスターを作製した人もいましたがそれもご愛嬌!

新里先生のe-posterと異なり、羽賀先生の発表(代役:垣花)は約90分間、作成したポスターの前に立ちポスターを見に来た人にデータの説明をしたり、質問に答えたりするというシステムです。90分間も立ち続けるのはなかなかしんどいので、他のポスターを歩いて回り自分の興味ある発表者には質問したり意見を述べたりしておりました。羽賀先生のポスターに帰ってきたときにポスターを読んでいる人がいたら、”Do you have a question for me?"と声をかけDisucussionするということを繰り返していました。質問の内容は、帰国後に皆さんにお知らせします。
この方はブラジルの麻酔科医でした


他のメンバーも興味あるポスターに果敢に挑んでいました。

ポスター発表を終えるとやはりお腹が空きます。本日は、サンフランシスコのチャイナタウンで飲茶! 
会場から15分ほど歩いて大人気の中華レストランに行き、美味しい飲茶を食べました。
とりあえず、無事羽賀先生のポスター発表の無事終了をお知らせいたします。


 

アメリカ麻酔学会2023参加 その2

2023-10-16

いよいよ始まりました。アメリカ麻酔学会2023! 世界中の麻酔科医が集まる麻酔領域の世界最大規模の学会です。COVID-19パンデミック以前は2万人を超える参加者でしたが、以前と比べるとやはり少なくなっているような気がします。しかしながら、1万人は遥かに超える参加者が集いますので、すごく賑やかです。
新里先生と後期研修医君たちは、まずは記念撮影! 
本日e-poster発表の新里先生の緊張を和らげるために、展示ブースを散策した後にいざ会場へ!!
会場では多くの知り合いと再会する機会がありましたが、そこに我々の同門であるUCSFの金城さくら先生が来てくれて応援してくれました。

発表は、e-posterの前で口頭発表(7分間)し2分間の質疑応答となります。原稿を持ちながらでしたが、視線を時々聴衆に向けたりポスターを指さしたりして上出来の発表でした。
Modulatorからの質問があり、新里先生には少し早口で聞き取ることが難しい状況でしたが、一生懸命答えていました。よく頑張った!!

新里先生の緊張がほかの皆にも伝わっていたのか、お昼ご飯を食べるのも忘れてしまっていたので、”新里先生、お疲れ様会”をユニオンスクエア近くのイタリアンレストランで行いました。
極度の緊張の後のワインと食事のおいしさは格別でした。こんな感じで第1日目のアメリカ麻酔学会が終了しました。

アメリカ麻酔学会2023参加 その1

2023-10-15



久しぶりにアメリカ麻酔学会2023(ASA2023)に参加しています。会場はカリフォルニアのサンフランシスコです。羽田空港で乗り継ぎ、無事国際線の出国手続きを通過しました(出国手続きもトラブルなく通過!)。予定より約1時間半遅れて飛び立ちましたが、羽田空港から約8時間のフライト、みんな元気にアメリカに到着しました。直ちにホテルにチェックインし、会場のMoscone Convention Centerに向かい、Registrationも済ませました。そのあとは、眠気覚ましにFishermans Warfまで歩いて(1万歩以上)行ってきました。
明日からの学会本番、14日に新里先生がe-poster発表、15日は羽賀先生の代役で私がPoster発表をさせてもらいます。琉球大学麻酔科における臨床研究の成果を世界へ!!、頑張ります。
 

琉球大学麻酔科講義動画開設!

2022-08-24

皆様、久しぶりのブログ投稿になります。
COVID-19に(未だ)罹患することなく元気に働いております。
この3年間で世の中は大きく変化してしまいました。
さらに、日本では”働き方改革”の旗振りのもと、労働時間の規制が強くなり、琉球大学でも超勤時間を短くするようにとの命令が来ております。これまでは、夕方に症例検討会や研究会等を開催して皆で勉強する機会を設けていましたが、今ではそれも難しくなりました(夕方まで複数の手術が終わっていない場合が増えたことも要因のひとつ)。そのおかげで後期研修医のための勉強会の機会も無くなってしまい、後期研修医の皆さんにどうにかしてそのような機会を持ちたいと考えていました。
COVID-19感染拡大の中、殆どの教育機関ではオンライン形式の授業がなされ、教育者としての我々もその準備に大忙しでした。特に、これまでの講義とことなりPPTのスライドショーを音声付で録音、MP4形式で保存し講義に用いるという新たな業務に負われ、”あー、面倒くさい”と思ってしまうときもありました。しかし、おかげで音声付PPTスライドショーを作成する技能を身に付けることができました。
そこで思いついたことは、せっかく身につけたこの技術を後期研修医のための勉強の機会に用いてはどうかというアイディアを思いつき、琉球大学医学部麻酔科HPに「講義動画アーカイブ」を開設することにしました。
その内容は主に、専門医試験の範囲にもなっている日本麻酔科学会教育ガイドラインに則り、後期研修医が個人で勉強しにくい(耳学問のほうが理解しやすい)項目を、スライドショーを用いて30分以内で講義するというものにするつもりです。
とりあえず、私が4つの講義動画を作成しましたのでそれを開設していますが、これからは医局の専門医の皆さんの力も借りてその内容を増やそうと思っています。
この講義は、これだけで全てを網羅しているというものではなく、それぞれの項目を勉強するきっかけにしてもらえればと思っています。大学にいる医局員であれば、いつでも、どこでも閲覧が可能ということで、大いに活用してもらえればうれしいです。
是非、活用してください!!

"One for All, All for One"の精神

2019-10-22

久しぶりの“まなブログ”への投稿です。この1ヶ月のラグビーワールドカップの盛り上がりは、何といってもJAPANの大活躍のおかげです。特にスコットランド戦の後半残り20分の攻防(ほとんど守りであったが)は痺れました。全ての選手が全力で相手にぶつかり、全力で押し込み、全力で走り、全力でラグビーボールを奪いに行く姿勢に心を打たれました。

ラグビーには、“One for All, All for One”という言葉があります。それぞれのポジション(フッカー、プロップ、ロック、フランカー、ナンバー8、スクラムハーフ、スタンドオフ、センターバック、ウィング、フルバック)にはその役割がはっきりしておりそれぞれがその役割を担うことになりますが、実際にはポジションとは別にお互いの役割をカバーし合うということも意味していると思います。“俺はフッカーだから、トライはウィングに任せる”などということはあり得ないのです。

最近、国の政策として“働き方改革”が掲げられていますが、医療界にもその波が押し寄せています。医師の“働き方改革”の手段としてコメディカルの活用が推奨されています。つまり、医師でなくても出来ることはコメディカル(看護師、準看護師、臨床工学士、臨床検査技師など)に任せ、医師の負担を軽減するということです。これはラグビーに例えると、医療界の各ポジションへの仕事の分配(Work Sharing)によりそれぞれの役割をはっきりさせることです。この状況で注意が必要なのは、役割をはっきりさせた場合に果たして医療が円滑に進められるのか、最終的には患者が損をしないのかということです。“これは臨床工学士の仕事だから、医師の私は関係ない”ということになってはいけないと思います。もちろんWork Sharingは進めるべきことではありますが、絶え間なく(24時間、365日)全てのコメディカルや医師が病院にいることなど現実的にあり得ません。私の考え(私見)としては、コメディカルが何らかの理由により居ないことにより患者の健康が脅かされる可能性がある場合、それを出来る範囲で医師が補うためにある程度看護師の仕事もでき、臨床工学士や臨床検査技師などの知識も持ち合わせるべきであると考えています。

琉球大学医学部附属病院麻酔科では、麻酔器の整備(ソーダライムの交換、フローセンサーや酸素濃度計の交換など)、人工呼吸器や人工透析回路の組み立て、血液ガス分析装置の電極交換、グラム染色やROTEMなどの検査、MEP電極の装着や測定等、麻酔科医局員ができるような教育を後期研修医に提供しています。これによりお互いをカバーでき、結果として患者が損をしないという状況を提供できていると思っています。

これから医療界に押し寄せるWork Sharingの波の中で、“One for All, All for One”の精神は決して忘れてはいけないことだと私は思います。ラグピーJAPANの活躍をみてそう思いました。

“最近の若い者は・・・・・”

2019-03-14

いかなる生物も誕生時から肉体的にも精神的にも成長し、さらに主に肉体的に老化し死に至ります。精神的な部分については、体が衰えても精神的にしっかりされた方も多くいらっしゃることから死ぬまで成長を続けられると考えられます。このことから、誰しも肉体的にも精神的にも未熟な時期があることは当然なことでしょう。では、ベテランの方々が常々口にする “最近の若い者は・・・”というフレーズですが、そもそも当然若者であった時期を過ごしてきたベテランの方々は、かつてその先輩方にどのように表現されていたのでしょうか?

 先日、琉球大学医学部附属病院臨床研修センター主催の「RyuMIC指導医養成セミナー」に、責任者として参加してきました。このセミナーでは、はじめに受講生(卒後7年目以降の指導医)に対し「研修医指導における悩み」をKJ法という手法を用い表現させています。私はこの十数年にわたりタスクあるいは責任者として関わってきたので、「研修医指導における悩み」を経時的に見ることができるという貴重な経験をさせてもらっています。今年も悩み多き指導医が持つ「悩み」を眺めていると、「雑用を嫌がる」、「早く帰りたがる」、「研修医にやる気が無い」、「モチベーションが低い」など、研修医に対する“悩み”が例年通り多くみられました。その時、ふと気づいたことがありました。この指導医の“研修医に対する悩み”ですが、指導医養成セミナーが始まったころの十数年前から「研修医にやる気が無い」、「モチベーションが低い」などは多く見られました。つまり、ある種の普遍性を持っているということでしょうか? 考えてみると、今年の受講者の殆どが十数年前には研修医だったはずであり、つまり彼らも研修医の頃は、この指導医養成セミナーに参加していた指導医から「やる気が無い」、「モチベーションが低い」と思われていたということです。そこで私のほうから今年の受講生に、「皆さんが研修医の頃の指導医も、あなたがたに同じような悩みを持っていたのですが、皆さんが研修医のときに「モチベーションが低かった」とか「やる気がなかった」という方はいらっしゃいますか?」と尋ねたところ、そのような方は誰もいませんでした。個別に尋ねてみても、「やる気はあった」し「モチベーションが無いわけではなかった」という答えでした。

 これは、かつて研修医であった指導医がその時代から成長をしたということ、あるいは研修医の頃の若者が自分の「やる気」や「高いモチベーション」を表現することが不得手であり指導医に伝わっていない可能性が考えられます。いずれにしろ、研修医も決して「やる気がない」わけではないし、「モチベーションが低い」わけでもないということのようです。我々指導医としては、個人差はあるにしても彼らの持っている「やる気」や「モチベーション」を引き出してやることも仕事のひとつだということでしょう。

“最近の若い者は・・・”と思っているあなたは、かつてはそのように思われていたということに気づいていますか?

”もっている”人

2018-09-23

今年の夏は全国的に猛暑となり、おかしなことに沖縄が避暑地になってしまいました。そんな猛暑の時期の少し前に開催されたFIFAワールドカップサッカーロシア大会を終えて3ヶ月が経とうとしています(もう、忘れてしまったかもしれませんが・・・)。我が日本代表チームは、世の中の評価(期待?)を裏切り、予選でコロンビアを倒し決勝トーナメントへの勢いをつけてくれました。このロシア大会の2ヶ月前に日本代表監督がハリルホジッチ氏から西野朗氏に電撃的に交代され、世界的には日本代表が予選トーナメントを突破するのは困難と考えられていました。

ハリルホジッチ氏から日本代表監督を引き継いだ西野朗氏は、早稲田大学サッカー部出身で在学中に日本代表に選出された輝かしい選手時代を送っていますが、それよりも私は指導者としての力量に注目していました。1996年のアトランタオリンピックで当時の日本代表(前園、中田英など)がブラジル代表を破った“マイアミの奇跡”というものがありましたが、そのときの日本代表監督も西野朗氏でした。1998年から就いた柏レイソル、2002年からのガンバ大阪でもJリーグ優勝やナビスコカップ優勝など、輝かしい実績を挙げていました。この実績を知っていたので、ハリルホジッチ監督解任後に西野朗氏が監督に就任したとき、個人的には期待していました。ですので、コロンビアを破った時には“やっぱり西野朗氏は正解だった”と確信しました。

なぜ西野朗氏はこんなに好成績を挙げるのでしょうか?西野朗氏の大学時代の後輩である日本代表元監督の岡田武史氏が、ワールドカップロシア大会のテレビ解説の中でこのようなことを話してくれました。「皆さんは西野さんは“(運を)もっている”といいますが、確かに西野さんはもっていると思います。でも、西野さんが常に“もっている”と評価されるのは、いつも何かにチャレンジしているからです。チャレンジしないと何ももつことはできないんです。」

この解説を聴いて、いろいろなことが腑に落ちました。ただ日常の時間を過ごすのではなく、目標を持ってそれにチャレンジする・・・・、チャレンジしないと何も達成できない・・・。

皆さんの周りに“もっている”人がいると思います。その人も常にチャレンジしていると思います。医局員の皆さんにも、チャレンジ精神を忘れずに“もっている”人になってもらいたいと思っています。

オンリー1を目指して

2018-05-29

4月30日にアップした“まなブログ”「ものの価値」の中で、琉球大学医学部麻酔科はオンリー1を目指すべきだという趣旨で述べました。2000年前後には、「琉球大学医学部麻酔科といえば・・・・」とイメージしてもらえるように、大血管手術における脊髄虚血の基礎研究、臨床研究そして症例報告を積極的に推し進めてきました。今では、脊髄虚血といえば必ずといっていいほど琉球大学医学部麻酔科という名前が出てくるまでになったと自負しています。それから18年が経過した今、地方大学医局のひとつである琉球大学医学部麻酔科が何を持ってオンリー1になれるでしょうか?
臨床、教育そして研究は、大学の責務であることは言うまでもありません。この3本柱のどれを重点とするかが、その医局の特徴になります。ちなみに、琉球大学医学部麻酔科は教育を第一とした運営を行うことにしています。医局のみならずどの組織でもオンリー1を目指すとは、「他のだれとも違う」ことを目指すことだと思います。「他の誰とも違う」というのは、「独創」とも言い換えることが出来ると思います。この中の「独」はいわゆるオンリー1に通ずるものでありますが、「創」というのは「つくりだす」という意味になります。オンリー1を目指すには、この「つくりだす」こと、いわゆる「イノベーション」が必要だと私は思います。
「イノベーション」というとハードルが高いと感じますが、例えば研究から生み出された成果は「イノベーション」の宝庫だとおもいます。もっとハードルを下げるとしたら、「日頃の不自由さ・不便さ」を探し出すことから「イノベーション」につながると考えられます。特に、我々が働いている手術室やICUには多くの「不自由・不便」があり、我々の周りには「イノベーション」の可能性があふれていると思います。例えば、ビデオ喉頭鏡であるMcGrathは、昔から変わっていない喉頭鏡のダサいデザインに築いたデザイン学校の学生が卒業作品として作り上げたものであり、これも「イノベーション」だと思います。何気ない「不自由さ・不便さ」を認識し、それを収集してその対策あるいはそれを解決できる工夫などを考え出せれば、それは「イノベーション」につながります。
また、琉球大学医学部麻酔科の実験室では、他にない研究を進めており、近いうちに特許申請につながる可能性のある研究を行っています。非常に大きな楽しみです。
これまで大学では「イノベーション」から少し離れたところに立ち位置を置いていました。しかし世界的にはアカデミアの研究と産業をつなげる産学連携が進んでおり、さらには大学発のベンチャーの起業が盛んに行われています。いま思うことは、ひとつでもいいから「イノベーション」を出したいということです。それがオンリー1になることだと思います。
 

ものの価値

2018-04-30

「人の価値って何だろう?」と、ふと考えることがありました。その人の道徳観?。人間性?、学歴?、収入?、社会的地位?・・・・。もし、人間の価値を示すパラメータがあったとしたら、そのパラメータを見て「自分は価値ある人間だ。うれしい」と本人は思うのでしょうか?

 なぜこのようなことを考えたかというと、ポリクリの学生さんから「なぜ麻酔科医になったのですか?」と尋ねられたからです。このときいつも答えるの内容は「病院で麻酔科医がひとりいなくなると約500症例の手術に対応できなくなる。これは他の科の医師が変わりに出来ないことだから、麻酔科医の価値はより高いことに気がついたから。」というような内容で答えていました。そういうわけで「価値とは?」と考えることがありました。

 学歴、収入あるいは社会的地位の価値は、それぞれの比較対象より高いか低いかということがそのパラメータになります。つまりいわゆる相対的比較ですので、ナンバー1になることが究極かもしれません。道徳観や人間性などはそれにスケーリングがないので、絶対的比較の対象となります。つまり、そのパラメータはオンリー1であるかどうかだと思います。

 ちなみに、2003年にSMAPの「世界にひとつだけの花」が発売され、その中の“ナンバー1にならくてもいい、もっともっと特別なオンリー1”という歌詞が印象的ですが、私は2001年のノーベル賞を受賞した野依良治先生の受賞インタビューの記事でこのフレーズをみました。このフレーズは、そもそも京都大学の考え方のようですが・・・。

 麻酔科医個人の価値は、医療界の中でやはり“オンリー1”的なものだと思います。では、麻酔科医の集団のひとつである麻酔科学教室の価値はナンバー1でしょうかそれともオンリー1でしょうか? さらに大きなもの、たとえば病院や大学の価値はどちらでしょうか? もっと大きな視点で考えると、自治体(市町村)や国の価値はどちらで判断すべきでしょうか? その答えを出すのはなかなか難しいし、「人の価値」を決めることはさらに難しいことだと思います。

 ただ、言えることはナンバー1になることはかなり難しくこれは限られたものですが、オンリー1というのは不可能なことではありません。教授という立場ですから、教室の価値を高めるあるいは価値ある方向性に進めることは私の責務になります。では、我々はどこに進むべきなのか、やはりオンリー1を目指すべきだと思います。 その戦略についての私の考えは後日述べたいと思います。

医師と患者との契約について

2017-11-26

 今年の日本臨床麻酔学会(東京)の中で、専門医共通講習のひとつである「医療安全」の座長をさせて頂きました。その際に、「医師」と「患者」との契約というのが、「準委任契約」であるということを知りました。そもそも「準委任契約」というものがどういうものかわからなかったので調べてみました。例えば、請負契約というものがありますが、これは請負人が負う義務は「仕事の完成」です。したがって、仕事が完成しなかった場合には債務不履行ということで損害賠償請求の対象となります。一方、「準委任契約」では、受任者が負う義務は「善良な管理者の注意を持ってその業務にあたること」だそうです。例えば、患者さんは病気を治してほしいということで受診しますが、もし仮に患者さんと医師の契約が請負契約だと、「仕事の完成」つまり「病気を治すこと」が出来なかった場合には損害賠償請求されます。実際には全ての患者が完治することはありませんが医師が損害賠償請求を求められないのは、請負契約ではないからです。では、「準委任契約」に負われている「善良な管理者の注意を持ってその業務にあたること」とはどういうことでしょう。これは善管注意義務ともいわれていることで「普通に要求される注意義務」ということのようです。つまり、医師とっての「普通に要求される注意義務」ということです。麻酔科的業務で「普通に要求される注意義務」とは何でしょうか?例えば、術前回診では既往歴、身体所見、検査値の把握ということになります。既往歴で脳梗塞があった場合、術前の症状の把握や神経学的所見も麻酔科医の「普通に要求される注意義務」に当たると思います。麻酔管理中はあまりにもたくさんの注意することがあります。例えば、病棟で確保された点滴ラインが漏れていないか? 投与薬物とその投与量(稀釈濃度)の確認、気管挿管確認事項として胸郭の動き・チューブの曇り・EtCO2・呼吸音聴診、術中体位による神経圧迫の有無の確認、抜管前の自発呼吸(換気量、回数)・意識の有無・指示動作可能か・反射があるか、抜管後の呼吸状態など、多くのことを注意しなければなりません。さらに、その証拠としてそれらの所見を麻酔チャートに残すということも重要なことです。これらの記載が無い場合には、注意義務がなされていないと判断されます。
 そして、私たちが気をつけなければならないことのひとつに、薬物の適正使用です。適応外使用や禁忌症例への使用は「普通に要求される注意義務」違反になるかもしれません。つまり、添付文書の内容を把握することは私たちの「普通に要求される注意義務」であり、適応外使用や禁忌症例への使用は「普通に要求される注意義務」違反となるかもしれません。
 今回の講習を聴いて、ふとこんなことを思ってしまいました。

米国式臨床研究と地方大学式臨床研究

2017-10-29

歴史ある米国麻酔学会、いわゆるASAが初めてボストンで開催されました。エーテル麻酔下の手術を公開したエーテルドームがボストンのマサチューセッツ総合病院(MGH)にあることから、米国の麻酔の発祥地として知られているボストンでのASA開催が初めてであるということは少し驚きでした。ちなみに、MGHの1日の手術症例数は、600症例以上だそうです。
さて、ASA学会で気づいたことは、米国から発表される臨床研究のn数が驚くほど膨大であることです。日本では数百から数千症例を対象としたRetrospectiveあるいはコホート研究であるが、米国では数万から数十万症例といういわゆるビッグデータを対象とした研究でした。これだけの症例を集められるシステムとそれを解析できる人材など、臨床データを解析する文化が日本より根付いていると強烈に実感させられた。これは絶対に勝てない・・・、と。しかし、「“同じことをしていては”、絶対勝てない。」というのが私の本音です。
 琉球大学からは、当講座初の無作為対象研究(RCT)の結果が採択されポスター発表しました。この研究では、37症例(対照群:19例、治療群18例)で明らかな統計学的有意差が認められたという報告でした。この発表には、ASAでPress Release)されるほど注目された発表でした。そもそもこの研究は、日頃の臨床から気がついた現象をRCTで証明したということであり、つまり闇雲にやられたものではなく“狙い”を定めた研究でした。
 ビッグデータの解析は確かに凄いという印象を受けますが、我々のような地方大学ではむしろ日常臨床に目を向けて、その中で気がついたことを臨床研究で証明することが現実的だと思いました。むしろ、1日に600症例をこなさなければならない米国の病院では、1例1例から何かに気づき研究を進めるということのほうが難しいのかもしれません。今回のASAに参加して、我々の方向性がぼんやり見えてきたような気がします。
 
ASA Press release
https://www.asahq.org/about-asa/newsroom/news-releases/2017/10/acetaminophen-may-help-reduce-postoperative-shivering
 

コミュニケーションと他人の靴

2017-07-28

  最近、学会などの出張の機会が多く、革靴をよく履いていますが、よく見るとかなりぼろぼろになっていることに気がつきました。私は日頃デッキシューズなどのカジュアルな靴を履いて出勤しているのですが、さすがにあまり履かないこの革靴でも5年間も使っていればぼろぼろになってしまうんだと気づきました。
  日々靴と接している足の裏は、小さな砂が靴に入っていても気づいてしまうほど敏感なところです。履きなれない靴や誤って他人の靴に足を入れたとき直ぐに気がつくことも理解できます。
  ところで靴は英語ではShoesですが、この単語を使った熟語に“Put myself in his/her shoes”というものがあります。これは、“自分自身を他人の靴の中に入れる”という直訳ですが、正確な意味は“相手の立場にたって”ということです。現実的に、他人の靴を履くことはありませんが、社会(コミュニティー)で生きるために“他人の靴を履く”ことは重要だと思います。
  10年程前に、中学生の女の子の手術が予定されました。その子のご両親は共働きで、術前日にはどうしても20時以降にしか来院できないという状況でした。ご両親が来院しその担当麻酔科医が術前回診をしたとき、恐らくその表情や言葉使い、声のトーンなどがかなり不適切なものだったのでしょう。翌朝、患者入室間近になって病棟看護師長から私に電話があり“ご両親が昨日の麻酔科医の対応に納得できない”ということを伝えられました。私がご両親とお会いしてお話をさせて頂きましたが、かなり不満を抱いている状況でした。お母さんは涙ながらに、「昨日はどうしてもその時間にしか来院できない(できることなら前日からずっと娘に付き添いたかったが)状況であったにも関わらず、それを理解してもらえない麻酔科医に娘を託すことに決心がつかない」とおっしゃりました。これに対して、私からは、ご両親の立場に立てなかった我々の不徳を心から謝罪し、さらに全力で麻酔管理をさせて頂く約束をさせてもらい、ご了解いただいたことがありました。
 患者やその家族は治療をお願いするという“弱い立場”にあり、一方で医師は診療するということで患者からみれば“強い立場”になります。私たちは日頃から“強い立場”にいることを忘れがちになり、そのためこのようなCommunication problemを起こしてしまうことがあります。これも、“相手の立場にたって”いればこのような事態を招くことは避けられたのではないでしょうか? この例以外のコミュニケーションのトラブルも、恐らくこれで多くを回避することができたと思います。
医師・教官である私たちは、職場において常に“強い立場”にいます。無意識に発する言葉、表情、声のトーンあるいは歩き方などを含めた振る舞い、これら全てが“弱い立場”の人に影響を及ぼしてしまいます。“強い立場”の私たちこそ、常に“相手の靴を履いて”行動しなければいけないとこの頃思いました。

 

麻酔”道”

2017-07-02

久しぶりのブログ更新です。ここ最近の話題として、若い方々の活躍に目覚しいものがあります。例えば、男子卓球界の張本選手(13歳)は、世界ランク上位の選手に堂々と戦いを挑み、多くの勝利をおさめています。これまであまり注目されていなかった“卓球”に、光が当たりその競技人口も激増しているようです。また、将棋界の藤井4段(14歳)は、今や時の人になっており、連日メディアに取り上げられています。小学生の頃、将棋にはまった時期があり、将棋のプロを目指す“奨励会”について情報を集めたこともあった(結局、才能がまったくなかったので早々にあきらめました)ので、個人的にも興味をもって眺めています。私も小さい頃将棋道場に時々通い、そこにいる大人たちと将棋を指していた頃がありましたが、藤井君は毎日道場に通い将棋にのめりこんでいったようです。藤井君が通っていた将棋道場には、このような言葉が壁に張られているそうです。「弱者をなめず、強者にひるまず、自分に厳しく」・・・、これは柔道や剣道などの“道(どう)”に共通の心構えであり、将棋“道”にも当然当てはまるものです。
この言葉を見たときに、琉球大学医学部麻酔科の初代教授 奥田佳朗先生が当時の朝のカンファレンスで私たちに話した内容を思い出しました。「ほかの人の麻酔を観て、“こいつの麻酔はうまい”と思ったら、実力はかなり離れていると思いなさい。“俺はこいつと同じくらい”と思ったら、相手のほうが格段にうまいと思いなさい。“こいつは俺より少し下手だ”と思ったら、相手と同程度と思いなさい。」という内容でした。これは、「弱者をなめず、自分に厳しく」に相当する、まさに麻酔“道”だと認識しました。
では、麻酔“道”のなかで「強者にひるまず」は、何に相当するのでしょうか?これは私個人の考えですが、この「強者」とは麻酔管理困難症例に相当すると思います。いろいろな合併症を持って、しかもその合併症が十分にコントロールされていないような症例です。このような症例があたると、いろいろ考えなければいけないし、準備(教科書や文献を読む、機器の準備など)も多くなります。麻酔導入も恐る恐るしなければならないかもしれません。維持も油断できず気を張って麻酔管理をしなければなりません。しかし、自分の実力を信じ、理論に基づいた計画と周到な準備で立ち向かうこと、つまり「強者にひるまず」です。つまり、藤井4段が育った将棋道場に張られている「弱者をなめず、強者にひるまず、自分に厳しく」は麻酔“道”に通ずるものであり、プロの麻酔科医として持たなければならない意識だと思います。
これまでは、「最近の若者は・・・・」というフレーズはNegativeなイメージでしたが、昨今は「最近の若者は大したものだ」というPositiveな意味合いになってきました。彼らの活躍で、久しぶりに奥田先生の教えを思い出しました。
 

集団をみる時代においても”個”が重要

2017-02-12

Evidence-Based Medicine(EBM)が叫ばれて久しいですが、先日のある国際シンポジウムで自治医科大学の永井良三学長が「EBMの時代になったことで、“個”を忘れる時代になってしまった」と述べたようです。集団における傾向を統計学的解析によってその偶然性を否定できた場合、それをEvidenceとし医療におけるDecision-Makingに用いる・・・これがEBMと呼ばれています。つまり、集団から得られたデータを個人に当てはめるということになりますが、これに対し永井先生は「集団について語れても、個人については何も言えない。統計的に有意差があっても、臨床的に意義があるかは別問題」と述べており、私もこの意見に大賛成です。
医学部に入学した際に最初に「病を診るのではなく人(個人)を診なさい」ということばを教えられました。この精神は医師のみならず医療関係者は決して忘れてはいけないことだと思っています。しかし、EBM時代の医療は、個人の病気を集団のデータに当てはめ、個に関わらず最も有効と考えられている処置を提供することを良しとしているようにおもえてなりません。本当にこれが良いことなのか、我々はじっくり考えなければならないと思います。
患者をもつ主治医は、患者が退院する際にその症例ごとに退院サマリーを書き上げます。この作業は、個々人の経過をサマリーとして書き上げるものですが、EBM時代に個を顧みる重要な作業であり、いわば”ちょっとした症例報告”のようなものです。麻酔科は毎日症例をこなしていきますが、この”退院サマリー”のように症例ごとに麻酔症例を振り返る機会はあるでしょうか?そのような機会は極めて少ない様な気がします。全ての麻酔症例を振り返る必要が必ずしもあるとは思いませんが、非常にうまく管理できた重症症例や合併症を呈した症例などはできる限り顧みる必要があります。それも文章化して顧みる必要があると思います。つまり、症例報告です。症例ごとに関連する多くの文献を調べ、理論的に病態や対策などを顧みることができる症例報告、これこそ”病を診るのではなく人(個人)を診る”ことができると私は信じています。
先代の須加原教授(現:琉球大学副学長・理事)が、”症例報告は患者さんへの恩返し”とよく仰っていました。患者さんから学んだことに対する恩返し、まさにその通りだと最近思うようになりました。「集団をみる時代においても”個”が重要」。このスローガン、気に入っています。

やりがいを表すキーワード”自分なりの・・・・”

2016-11-28

先週の土曜日に、ひょんなことから沖縄県内有数のリゾートホテルグループで講演をする機会を頂きました。医療界の私がホテル業界の方々に話をするにあたり、いくつかの文献を読みました。その中で、ホテルマンへのアンケートを解析した報告がありました。経験年数に関わらず「日頃からやりがいを感じている」ホテルマンの共通点は、「自分なりのサービスを喜んでもらえた」ということだったそうです。つまりそのキーワードは、「自分なりの・・・」です。ホテル業界は、医療界と同様に大型化しており、その業務にはマニュアルが必要となっているようです。マニュアルの利点は、①安全対策に有用であること、②効率化を推進できること、③誰もが同じサービスを提供できるという非属人化が知られています。しかし一方で、マニュアル以外のことを考えなくなることが欠点であり、その結果個々人の創造能力が低下する可能性があります。これはホテル業界のみならず、医療界でも同じことに直面しているかもしれません。このような状況の中で、やりがいを感じているホテルマンに共通の「自分なりの・・・」という言葉は、マニュアル社会とは異なる方向性にあり、この両立が可能なのか否かを考えさせられました。
私が働いている手術室ではポリクリ学生がたくさん手術や麻酔を見学しています。20数年前に私もこの手術室でポリクリを経験しました。外科系のポリクリでは、耳鼻科、脳外科、一般外科などで手洗いさせてもらい、鈎引きや皮膚縫合を経験させてもらいました。特に皮膚縫合は、「自分なりに」見よう見まねで糸結びをしました。しかし、技術の不十分さと比例して糸結びも術創を綺麗に閉じることができずに指導医に糸を切られたものでした。しかし糸は切られましたが、「自分なりに」皮膚縫合をさせてもらえたことに充実感を持つことができ、それは今でも覚えているほどの感動でもありました。一方、今のポリクリ学生は、手術場でいろいろなことをさせてもらっているというような機会が私の時代と比較すると極端に少ないような気がしています。
麻酔科のポリクリでは、外科と異なり手技が少ないため、なかなか実技を経験させることは難しいです。しかし「自分なりの・・・」というキーワードを考えると、それは決して手技だけに限らず、診療の中のDecision-Makingに学生の意見を取り入れてみることはポリクリ学生の「やりがい」に繋がるのではと思っています。例えば、術中の低血圧への対処をあらかじめ学生さんに考えてもらいそれを実践する(学生の意見が突拍子も無いようなことでなければ)とか、輸液量の調節を学生さんに任せてみるなどを実践してみると、「診療に参加させてもらっている」ということで満足度が高くなると思います。
教育現場において、教育を受ける側の「やりがい」を高めるために、ポリクリ学生の「自分なりの・・・」というキーワードの重要性について、講演させて頂いた私が教えてもらったような気がしました。

Priebe先生 来沖

2016-10-15

10月10日から13日まで、ドイツのFreiburgからHans Priebe先生が沖縄に滞在してくれました。Pribe先生は、Anesth AnalgのCase ReportのChief Editorとして活躍中の方です。せっかくなので11日と12日の両日早朝から30分間の講義をして頂きました。周術期の吸入酸素濃度、PEEPと肺リクルートメントの意義、Oxygen Paradoxなど、私を含め医局員にとって素晴らしい講義となりました。Priebe先生は、何度も来日していることもあり、日本人のHearing能力を考慮して聞きやすいスピードで講義を勧めてくれました。本当に感謝、Danke、Thanksです。私は、2日間の観光案内をさせて頂きましたが、何事にも興味を持ち疑問に思ったことに対しては私に質問を投げかけてきましたが、このように些細なことでも興味を持つ姿勢に感動しました。沖縄に来る前には台湾を観光、そして沖縄の後には弘前、カンボジアを訪れ、ドイツに帰国するとのことです。寒暖の激しいこの時期なので、体調に気を付けて無事にドイツに到着することを願っています。このような機会があれば、是非これからもできる限り受け入れたいと思っています。

 

済州島から

2016-09-11

九州ペインクリニック学会と交流のある釜山ペインクリニック学会(BUK Pain Society)に参加しました。いつもは釜山で開催されていましたが、今年は済州島ということで参加者も昨年より多かった気がします。日頃からペインクリニックをしていない私がなぜこの学会に参加したかというと、昨年2月にBUKのメンバーが沖縄を訪問した際にお世話したことから交流が始まり、今回の学会ではいつの間にかSpecial Lectureの座長にさせられていたからです。とはいえ、多くのBUKの皆さんと交流を持つことができ有意義な時間を過ごすことができました。今回出会った方々の中で、若手のOk先生とPark先生と多くの時間を過ごしました。彼らは、医師となって10年に満たない若手のペインクリニッシャンでした。彼らとの意思疎通は英語で行いましたが、非常に綺麗な英語(文章のみならず発音も含め)でした。米国留学の経験があるかと尋ねましたが、それは全くなし!!さらに驚かされたのは、片言の日本語も話せました。日本人の私が来るということで急遽勉強したとは思えませんでしたが、もしそうであれば全く韓国語を知らない私の準備不足を恥じることになったでしょう。韓国の皆さん(医師という職業をもった一部の方だと思いますが)は、英語を躊躇なく使いコミュニケーションを取ろうという意気込みを持っているように感じました。日韓関係にはいろいろな問題がありますが、このような点は本当に見習うべきことだと思います。日本人は英語を苦手としていますが、きれいな英語を話すことに執着しすぎており、それが逆に日本人が英語を敬遠する原因となっていると思います。今は、英語を使わなくても生きていける状況なので敢えて使わなくても良いというのも日本人の考え方だと思います。いわゆる、”外向きの韓国と内向きの日本”というところでしょうか。しかしこれからは、いやもう既に始まっているグローバリゼーションのなかでは、”外向き”の意気込みが必要です。医局員の皆さんにも、色々なことで”内向きかつ外向き”という臨機応変のある人材になってほしいと、今回の韓国滞在中に思いました。10月10日から3日間、ドイツからPiere先生が沖縄に滞在します。いい機会ですので、医局員に彼のお世話をしてもらおうと考えています。これも”外向き”への第一歩だと思います。

リオデジャネイロオリンピックが終わって

2016-09-05

リオデジャネイロオリンピックでは、前半戦のみならず後半戦も日本人の活躍に日本中が盛り上がりました。特に、陸上男子400mリレーは、久しぶりに鳥肌が立つほどの興奮を覚えました。400mリレーの日本選手は、それぞれのベストタイムが10秒台であり、9秒台の選手を並べたジャマイカ、米国、イギリスそしてカナダなどと比較するとかなり不利な状況でした。しかし、この苦境を凌駕したのが巧妙かつ完璧な日本が誇るバトンパス! 結局、日本は米国を抑え2位となり銀メダルを獲得できたのです。各々をみると成し遂げられなかったことを、個々を繋ぐことで結果に結びつけた・・、これは医療にも役立つと思いました。
医師は、患者さんひとりひとりに対し十分な医療を提供しています。麻酔科医である我々も、毎日毎日、次から次へとやってくる症例に安全な麻酔を提供しています。しかし、この次から次へと当たり前にやってくる症例を”こなし”てしまってはいないでしょうか? 例えば、先週の水曜日の症例を覚えていますか? 最近麻酔管理した腹腔鏡下結腸切除術の症例を覚えていますか? あるいは、あなたがこの3か月間に麻酔管理した症例の中で最も多く管理した手術を把握していますか? なかなか思い出せないのではないでしょうか? 「当たり前のようにやってくる症例を当然の仕事として麻酔管理する」という状況は、言い過ぎかもしれませんが「毎日食べている食事」のような感覚になってしまうかもしれません。(先週の水曜日の夕食を思い出せないのは私だけでしょうか?)
医師として、ひとりひとりの症例に全力を注ぐことは当然ですが、それが”こなす”ことになってしまうことは非常に残念なことです。では、どうすればいいのか? 陸上男子400mリレーを思い出してください。”おのおのでは成し遂げられなかったことを、個々を繋ぐことで結果に結びつけた”ということです。今、琉球大学附属病院麻酔科では、毎週金曜日の7:20から1週間の症例の”レビュー”(教室員の皆さんは「振り返り」といっていますが)を行っています。そこでは、術前カンファレンスで挙がった問題点に対する対処と結果、術中に発生した問題点などを皆で確認しながら振り返っています。そうすることで、少なくとも1週間の症例が”点”ではなく、”線”として記憶に残ります。さらに、このレヴューではPONV、シバリング、嗄声そして術後疼痛などの合併症を表として一見できますが、それぞれの合併症が頻発する症例などを把握することもできました。これは思いもよらない副産物ですが、これも”おのおのでは成し遂げられなかったことを、個々を繋ぐことで結果に結びつけた”だと思っています。
これからも”おのおのでは成し遂げられなかったことを、個々を繋ぐ”ことも視野に入れたカンファレンスを続けていきたいと思っています。

琉球大学麻酔科HPリニューアル

2016-08-13

琉球大学大学院医学研究科麻酔科の垣花です。しばらくお休みをしていた琉球大学麻酔科のHPを、医局員の林先生が中心となりリニューアルしてくれました。今年度は4名の新たな仲間たちも増えましたし、新たな麻酔科のスタートという意味も込めてのリニューアルです。多くの皆さんがこのHPを閲覧してくれることを楽しみにしています。
同じ時期にリオデジャネイロオリンピックが開催されました。体操、柔道そして水泳競技での日本人の大活躍に驚いています。なぜなら、前回、前々回のオリンピックではこれほど活躍をしていなかったので・・・・。この日本人の大活躍について、ある評論家が「いよいよ日本人が本気を出してきたのでは・・・」と語っていました。身体能力のハンディはありますが、それを科学的なトレーニングにより鍛えあげ、それにもともと持っている勤勉さ、直向きさ、素直さを前面に出した練習の成果が今回の結果に繋がっているということでした。
日本人特有の「勤勉さ、直向きさ、素直さ」が武器になるということ・・・、個人的には「なるほど」と思いました。
琉球大学医学部附属病院の手術件数の増加は著しいものがありますが、医局員のみんなの「勤勉さ、直向きさ、素直さ」さらに加えて「持ち前の明るさ」によって非常に効率よくこなしてくれています。私は、ただただ感謝するばかりです。
そんな医局の日常や個人的な雑感を、この「まなブログ」で発信していきたいと思います。
皆さん、宜しくお願い致します。

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